ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

アクティブラーニング教室でのプレゼンテーションの試験

いよいよ前期が終わる

大雨での休講が途中に入りましたが、なんとか今学期も15週目まで終えることができました。

以前の記事にも取り上げていた、アクティブラーニング教室での授業ですが、だんだん私も学生たちも要領がわかってきて、グループワークを中心にした授業ができるようになってきました。

 

schlossbaerental.hatenablog.com

 今回はこの記事の後半で説明している、グループごとにデスクを並べ替えたり、グループで一つずつホワイトボードを使える教室での授業について書きます。

金曜日の2年生向けドイツ語総合3のクラスは、教科書を指定しているものの、教科書の解説と問題練習だけではつまらないので、毎回15分から30分程度、ホワイトボードを使ったグループワークを実施しています。

15回目は口述試験

私はどのクラスでも、15回目に口述試験を行うようにしています。大学全体で定めているルールとして、試験期間中にペーパーテストは行っています。それとは別に、ドイツ語の文章を自分で作ったり、ちゃんと発音できるかを確認したりするテストを、各クラスの最終回に行なっております。

この口述試験の目的は正直なところスピーキングやコミュニケーション能力をはかることではありません。それよりはむしろ、教科書や授業内の練習で身につけた、ドイツ語文法や文を作る上でのルールや、発音を確認する機会としています。また、授業内容全体を復習し、(翌週に行う)ペーパーテストの勉強への導入になればと期待しています。

そのため、これまでのクラスでは、教科書の前半で出てくる内容(動詞の人称変化、話法の助動詞、所有冠詞など)を使って、自分および自分の家族や趣味についてのプレゼンテーションを試験としてきました。あるいは、学生にある程度下準備をさせた上で、一人一人に私が5つくらい質問をしてちゃんと答えられるかを見るテストをしたこともありました。

 

グループワーク中心の授業で、どんな口述試験ができるか?

ペアではなく、3〜4人のグループでどのような口述試験ができるでしょうか。かつて実施したものとしては、京大などでやった動画を作る課題とか、本務校で実施した4コマでお話しをつくってプレゼンするといった方法があります。

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今回は、普段からホワイトボードを使って文章を作るグループワークをしているので、その延長ですぐできるものにする必要がありました。普段のワークで私が重視していたのは、教科書にでてくる新しい文法事項を習得することと、ドイツ語の基本である語順や変化を、繰り返し練習する中で身につけることでした。

いつもの授業での課題は、たとえば「〇〇を使った疑問文とその答えの文を作る」(〇〇にはその日の学習内容、不規則変化動詞、3、4格の目的語、所有冠詞つきの名詞、3、4格支配の形容詞などが入ります)という形です。そのため、学生たちにはある程度、問いと答えのパターンや例文のストックが定着していると考えられました(まあ程度の差はあるのですが)。

そこで今回は、問いと答えをもう少し膨らませて、10文以上からなる会話文を作り、プレゼンテーションをするということを課題としました。

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会話文の作成

いちおう試験なので、レジュメで課題の詳細を説明しました。

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(レジュメでは10文程度としていますが、当日は10文よりもっと長くてもいいと言いました)

10時45分からの授業で、11時ごろからグループでの作業をスタートしました。1時間は長いかなと思ったのですが、各グループの動きを見ていると、ちょうどいいくらいでした。

普段のグループワークでは、各グループの答えを見ながら、私がちょくちょく文法のミスや意味のわかりにくいところを指摘して回るのですが、今回はひたすら待つことに徹しました。近いところで解答を作ってるグループは、チーム内で議論しつつ、私の方に目で助けを求めてきていましたが、曖昧な笑みでかわしました。

文法事項のミスについては指摘しない、自分たちで話し合う、とはっきり言ったことがよかったのか、各グループとも、仕上げの時間になると、単語の転記ミス(なぜか学生たちを見ているとこれが非常に多いです)や文法のミスなどをちゃんと訂正できていました。

 

プレゼンテーションを終えて

どのグループも1時間で文章を作成し、発音を確認するところまでちゃんと終わらせられました。残りの15分で、5つのグループのプレゼンテーションを見ました。

教科書の会話文を参考に、メンバー全員が発言できるように登場人物をふやして文章を作ったチームもあれば、夏休みの予定を話題にしたチーム、振り込め詐欺や銀行強盗との会話を作ったチーム、予選敗退したドイツ代表選手との架空の会話を作ったチームなど、非常に工夫された力作ぞろいでした。

今回のワークでは、辞書や教科書はもちろん、スマホを使うことも認めていたので、ほとんどのチームがGoogle翻訳を使っていました。それにもかかわらず、あまりにも突拍子のない文が出てこなかったのは、やはりこれまでにやってきた授業内のワークが役に立っていると考えられます。(以前は学生に会話文を作らせると、教科書を全く無視してすべて自動翻訳で作成するなんてこともよくありました)

Google翻訳を使えばある程度の文を自動で作ってもらうことはできますが、それ以上に教科書やこれまでの授業で積み重ねてきた練習で得たものを生かしたほうが、簡単で確実に文章を書くことができるはずです。少なくとも多くの学生がそう思って、グループ内でよく話し合っていたことが、このグループワークの最大の成果だろうと思います。

 

まとめ

 

外国語の習得の過程を考えると、教科書を読んだり、練習問題を解いたりといった、文章を読んで理解する段階が最初にあります。その次に、読んだものを参考に、自分で文を作ってみる、さらに問いと答えの形を作ります。その積み重ねで会話のやり取りへと発展していくわけです。今回は前期の授業を通じて、この筋道をたどって、言語の構造のようなものを学生たちが理解できればと思いました。

初習外国語の授業において重要なポイントは、文法、覚えたフレーズによる会話、語彙などさまざまであり、どこに重点を置くかは教員の判断によります。私の方針としては、文法事項を解説したら、それを生かした作文練習を積んで、ドイツ語の構造を理解していくことが、コマ数が少なく、専門の学習に必要ない(語彙を増やす必要がない)学部においては最適ではないかと考えています。

まだテストが終わっていないので、このクラスが完全な成功だったとはいいきれないのですが、非常にいい手応えを得て前期を終えることができました。後期は話法の助動詞、現在完了形など、もう少し扱う文法事項が複雑になってきます。また会話文を作るワークをするとなれば、どのような話ができるのか楽しみです。