ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

毛脛を出す男子たち 学生の服装はどう変化したか

テスト中は普段考えないことを考える

学期末ということで、今週は授業の代わりにテスト監督をしていました。私たち専任教員の場合は、監督補助として、別の授業(おもに100人以上の大講義科目)のテストをお手伝いすることがあります。

自分の担当科目であれば、学生たちがちゃんとできているかやきもきしながら見守るわけですが、他の先生の科目の場合は、テストの間は机間巡視や出席確認などの仕事はするものの、けっこうひまです。退屈でしょうがないので、テストの問題を読んだりすることもあるし、あとは学生たちの様子を観察したりしてすごします。

 

薄着の男子学生多くない?

先日の監督補助のときに気になったのですが、やたら薄着の男子学生が多いように思いました。以前から多いなあと思っていましたが、膝上丈の半ズボンの男子学生はいまや半数以上です。(7分丈まで含めると7割超かもしれません)昨今ではノースリーブで肩を出している男子もいます。経営学部にたくさんいる体育会の学生(スポーツマネジメントコース)かと思えば、そういうわけでもなさそうです。

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考えてみれば、私が学生・院生だったころや助手として大学に勤め始めたころは、こんなに男子学生の露出度は高くなかったように思います。いったいいつごろから、どういう経緯で、男子たちは毛脛をだすようになったのでしょうか。正確なことはよくわからないのですが、男子学生の服装の変化について少し考えてみました。

 

温暖化の影響なのか?

私たちが学部生だった20年前は、プライベートならともかく、大学に来るのに男子が半ズボンをはいていくなんてことはなかったと思います。べつにきちっとした格好をしなきゃいけないとは思っていなくて、サンダルばきの男子はふつうにいました。ただ、毛脛を露出してはいけないんじゃないかという遠慮のようなものは、みんなが共有していたと思います。

今年の熱波で小中学校、高校などにエアコンを取り付けるべきかが議論になっています。私は高校までたしかにエアコンなどない学校にいました。*1だからといって、当時はいまよりずっと涼しくて、冷房なしで夏を過ごすのは当たり前だったということはまったくありません。私が過ごした北関東は20年前からすでに7月8月は35度以上の真夏日がめずらしくありませんでした。高校は男子校だったので、通学時は学生服を着ていたものの、授業中はみな半袖短パンでした。短パンすら脱いでいる生徒も少なからずいました。

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(大学3年生の初夏、いまはなき明大駿河台11号館屋上にて。ポールスミスのデニムを履いていました。アバハウスのハチや羽アリのイラストが入ったTシャツをよく着ていました)

大学時代はコンビニで働いていましたが、暑い夏には飲み物の発注や品出しに追われました。毎日夕方には翌日の天気予報を店のPCで確認して、東京は35度を超えるからスポーツドリンクをいっぱい注文しておこう、昼間の時間帯は手が空いたらすぐに冷蔵庫の補充をしようと、いつも気温を気にながら仕事をしていたので、当時の暑さはよく覚えています。

1999年、大学4年生のころは、院試の勉強をしながら通訳派遣・国際会議コーディネートなどの会社でアルバイトをしていました。私の役割は会社や官庁などのクライアントと通訳者さんとの間で、書類や機材を運ぶ仕事だったので、年中スーツ着用でした。真夏でもネクタイを締めて、ジャケットを持ち歩き、お客さんの前ではボタンを閉めて着ていました。暑さと疲れで、夏には血尿がでて病院で検査してもらったことすらありました。

思い出してみると、やはり当時から既に十分暑かったのでしょう。20年前は、学生も大人の男性も、みんな暑さはがまんするものという認識だったのかもしれません。

現在は、ようやく数年前からクールビズが定着し、会社や学校につとめる大人も、ジャケットは着ないで、半袖シャツやポロシャツを着て働くのがあたりまえになりました。おかげでだいぶ夏が過ごしやすくなりました。

 

いつごろ男子学生は半ズボンを履くようになったのか?

半ズボンの学生は、いつの間に増えたのでしょうか。思い出してみると、私自身も、助手の頃は自転車通勤だったこともあり、7分丈のパンツで通勤をしていたし、男子学生たちも足首を出す程度は当たり前だったように思います。

6年前、この大学の経済学部で教え始めた頃は、たしかにラフな格好の男子が多いと思ったものの、みんながみんな半ズボンなんていうことはありませんでした。

太ももが半分くらい出てしまうような短いハーフパンツは、おそらくこの3年くらいで急激に定着してきました。私の学部はそもそも男子学生が多いし、ドイツ語にくるのもほとんど男子です。自分のクラスに集まる学生たちを思い出すと、やはりここ数年で爆発的に短い半ズボン男子が増えてきました。

 

何が学生たちのファッションに影響を与えているのか?

学生たちにおけるファッションの流行というのは、女子学生だけでなく、男子学生においても当然あります。例えば明るい髪色は女子学生には今も人気ですが、男子たちにおいては数年前より減ったように思います。私の周りの男子学生たちは、脚や肩は出しているけど、ファッション自体は以前より地味になってきています。

学生の雰囲気が大学ごとに違うのと同様、学部ごとのカラーもけっこう違っていて興味深いです。ときどき、横断歩道を渡って、少し離れた文芸学部や総合社会学部に行くと、学生たちの雰囲気や服装が違っていることに気づきます。これらの学部は経営学部に比べて女子学生の比率が高く(半分以上)、それが男子学生の服装にも影響しているのかもしれません。(あまり半ズボン男子はいないようです)

また、経営学部の特徴として、スポーツ学生が多く在籍していることが挙げられます。朝から昼にかけて練習をして、午後以降授業に出てくる運動部の学生たちは、いつもジャージやTシャツなど動きやすそうな服装で教室にやってきます。設備が古くて廊下や階段が暑い経営学部にはちょうどいい服装だとも言えます。彼らの服装が一般学生にも取り入れられているという部分はあるでしょう。

留学生たちももしかしたら学生のファッションに影響を与えているかもしれません。とくに東アジア圏からきている学生たちは、日本人学生に比べて薄着でラフな格好をしていることが多く、彼らのファッションから日本人学生が影響を受けていることも考えられます。あるいは昨今非常に増えた、外国人旅行者からの影響もあるかもしれません。

いずれにせよ、私たちの世代では、ファッションの情報源が紙媒体と口コミがメインだった(学生時代の私も毎月ファッション誌を読んで、渋谷や原宿のショップによく出かけていました)のに対し、現在では雑誌の影響力は低下し、海外から来る人やネットでの情報(ユーチューバーなども含めて)など、多様化しているのは確かです。

 

毛脛を出す自由を!

ここまで、半ズボンを履いて大学に来る男子たちについて、考えたことを述べてきました。もちろん、世の中の多くの人が、このような流行を歓迎しているわけではないでしょう。

matome.naver.jp

 

これらのまとめ記事に見られるように、男子の半ズボンは女性には不評だというし、男性自身にも抵抗があることはわかっています。しかし、この熱波に適応するべく、薄着になっていくというのは自然なことなので私としては大歓迎です。

イギリスでは、校則で半ズボンが認められないから女子のスカートを履いて登校する男子たちが話題になりました。

news.livedoor.com

 

男子学生が毛脛をさらすことが、今時の世の中では、だんだんと当たり前のこととして受け入れられてきているのに対し、大人とくに教員が半ズボンで仕事をするのは未だ許されていません。

自分が積極的に半ズボン化推進の旗振り役になる気はありませんが、近い将来半ズボン先生も認められるようになることを望みます。

 

*1:エアコンはありませんでしたが、石油ストーブは各教室についていました。石油当番が石油を補給しにいったり、給食の時にはストーブの上で牛乳を湯煎したりしました。大阪府南部出身の妻に話したところ、やはりストーブなどなかったと言っていました。大阪程度の冷え込みならたしかに必要ないでしょう。