ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

大阪24区の旅、未踏の区に行ってみる(1)

大阪24区は残った

10月初めにブログを書いた後、住民投票を経て、大阪24区は存続が決まりました。

10月ごろは、私は完全に諦めていました。11月になれば、大阪市の廃止は決まってしまうだろう。そうなる前に、大阪市最後の日々を目に焼き付けておきたい、そう思っていました。

住民投票の結果、無事大阪市は維持されることになりました。しかし、おそらくまた別のかたちで同じようにろくでもない政策が打ち出されることでしょう。正直なところ、大阪市の存続が決定したとはいえ、安心はできそうにありません。新型コロナ流行に伴い、景気の大幅な後退が予想される中、今私たちが暮らしている町はこれからよりいっそう衰退へと向かうことは避けられないでしょう。

こうした現状に対して、私ができることはとくに何もないのですが、記録や記憶に関わる仕事(文学者もまた、そういう面を持っていると思います)をしている者として、どんな街だったかだけでも記録しておこうと思います。

ということで、これまで行ったことがない区を自転車でめぐってみました。今回は前編として、10月末に訪問した住之江区、大正区、11月初めに行った旭区、西成区の探訪記をまとめました。

 

1)住之江区

10月末、住民投票の前日に、大正区および住之江区を訪れました。大正区はすでに複数回、住之江区も昨年秋にナンバープレートの書き換えのときに、陸運局に来たことがありました。しかし、自転車で通りをじっくり見て回るのは今回が初めてでした。

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住之江区といっても、何を見たらいいのかよくわからなかったので、地図で見て面白そうだと思った、ループ橋を渡ってみることにしました。

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自宅からなにわ筋を下って、大阪ドームを越え、木津川を渡って大正区に入り、さらに南へ下ると、ループ橋が見えてきました。以前から興味があった、大正区と住之江区をつなぐ大きな橋を渡ってみました。

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こちらが千代松大橋です。こんなところ自転車で通っていいのだろうかと思っていたら、他にも自転車の通行者を見かけたし、何人かのグループでジョギングをする人もいました。坂道が少ない大阪では、こういう橋が高低差のあるトレーニング場として最適なのでしょう。

橋を渡って、住之江区に入ったものの、土地勘がなく、どこに行ったらいいかわかりません。しばらくあてもなく走っているうち、西成区との境に近い、かつての非常勤先を見つけました。2005年に指導教員からの紹介で(もとは先生の奥様が看護教員で、育児のために職を退かれたのでした)教えに行くようになりました。当時住んでいた北白川から2時間くらいかけて通いました。学生たちはかわいかったし、学校の先生方には大事にしていただきました。当時通っていた喫茶店は無くなっていたし、最寄りの四つ橋線北加賀屋駅までの道をたどってみましたが、どんな町だったかほとんど記憶がないことに気づきました。当時は教室で授業をするだけで精いっぱいだったのでしょう。

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学校は全く変わっていませんでした。

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駅前の様子はおぼろげにしか記憶がありませんでした。

北加賀屋から南港通りを進み、今度は新木津川大橋を超えて大正区側に戻りました。橋の上から望遠で写真を撮りましたが、梅田方面の高層ビルや私の住むマンションも見えました。

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新木津川大橋には、階段で上がります。車はべつの道。

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千代松大橋よりだいぶ広い道です。

f:id:doukana:20201031161144j:plain木津川。工場が多く立ち並んでいます。

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大正区および大阪市内側。梅田のビル街が見えます。

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橋を下りたところにある工場。

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碑に書いてありましたが、このへんはかつて飛行場があったそうです。しかし地盤の緩さや交通アクセスの問題で昭和14年に閉鎖されたそうです。

夕方で日が暮れそうな時間帯だったので、2つの橋を渡るだけで満足しましたが、大きな道路沿いしか見ていないので、今度は路地や商店街にも行きたいと思います。

 

2)大正区

環状線大正駅周辺には行ったことがありましたが、南部方面は、10年ほど前にイケアにバスで行って以来です。

区役所付近に人工的な山がある以外、ほぼフラットな土地で、工場と密集した住宅街が広がっています。駅は、区内の一番北にある、環状線と長堀鶴見緑地線の大正駅しかありません。あとはバスと船があります。大阪の湾岸部は、船を通すため、川や運河に橋があまりなく、そのため大正区内にはいくつかの渡船が現在も使われています。

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木津川の渡船場。西成区に渡ることができます。

大正駅付近にもいくつか商店街がありますが、今回は初めて区内南部の平尾商店街をみてみました。

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静かな住宅街にある昔ながらの商店街でした。

 

 

3)旭区

大阪市北部ですが、なぜかほとんどなじみがなかった旭区にも11月はじめに行ってみました。福島区の自宅からは、淀川のサイクリングロードを北東へ進むのがいちばん分かりやすいルートです。

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たまにしか列車が通過しないおおさか東線の鉄橋を越え、城北公園あたりで土手から下りると、ちょうど旭区に着きます。土地勘がないので、適当に自転車を走らせていると、太子橋今市駅が見えてきました。乗ったことがない地下鉄、今里筋線の駅です。

さっそく商店街を見つけたので入ってみました。

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アーケード商店街の中に十字路があり、写真でも判るようにふたつの八百屋さんが向かいあっています。旭区、栄えてるなと思いながら見ていましたが、ここは守口市だったとあとで気づきました。

このあたりは、地下鉄や京阪の駅がたくさんあり(隣の駅が見える距離で密集している)、それぞれの町ごとに昔からの商店街が残っています。地図をみないで適当に流しているうち、やっと有名な千林商店街に着きました。

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夕方のまだ早い時間帯(16時ごろ)にもかかわらず、たくさんの人が買い物に訪れています。市内中心部ではないのに、こんなにたくさん人がいるのだと驚きました。

地下鉄や京阪電車の駅も近いし、このあたりは住むにはとても便利だと思います。

 

4)西成区

じつは何年もかよっていた西成区ですが、勤務していた専門学校の最寄り駅以外はほとんど何もしりませんでした。ジョギングで南海難波線あたりまで走って行ったことはありましたが、区内をもうすこしちゃんと見て回りたいと以前から思っていました。

自宅からあみだ池筋を下って芦原橋駅を越え、合流したなにわ筋をしばらく進むと、南海汐見橋線の津守駅があります。

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本数が少ないめずらしい電車を見ることができました。

この近くに、津守商店街の入り口があります。

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年季の入ったアーケード商店街です。シャッターの閉じたお店も目立ちますが、小さいながらも営業を続けているお店が多くありました。この写真にも写っている餅屋さんですが、大阪ではどの町にも餅屋さんがあります。関東出身の私からすると、モチだけで商売が成り立つのかと最初は不思議に思ったものです。

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この写真からわかるように、古いアーケードの商店街はすぐに終わって、さらにもう少し新しい商店街がどこまでも続いていました。

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鶴見橋商店街は、いくつものブロックに分かれて東西にまっすぐ西成区を縦断しています。地図でみるとよく分かりますが、津守駅周辺から、萩ノ茶屋、今池を越えて、飛田新地のほうまで続いています。

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写真中央の白っぽい通りが、商店街のアーケードです。

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花園町でいったんアーケードがとぎれます。

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南海萩ノ茶屋駅前からは、より狭くて密度の濃い商店街が続いていました。

帰りは、もう少し南を通っている松虫通から、なにわ筋に入って北上しましたが、こんどは西天下茶屋駅のあたりで、別の商店街を見つけました。

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線路を渡ったところにある、人気のホルモン屋さん。たくさんお客さんが来ていました。

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コロッケ屋さんが右手にあります。奥には銀座商店街。

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銀座商店街と直交している、中央通商店街。すこし曲がりながら、長い道が続いています。

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f:id:doukana:20201107170042j:plain中央通り商店街が枝分かれするところに、人気のある飲み屋さんがありました。てんぷら屋さんも長い期間地域に根付いているのでしょう。

西成区には、ほかにも天下茶屋や玉出にアーケード商店街があるようです。近いうちに再訪したいと思います。


長くなったので、阿倍野区、生野区、東住吉区、平野区編は次回。