ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

エリアスとフェリックスのこと

ドイツ語の名前の話

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今日の授業で、ドイツ語のファーストネームVornameの話をしました。というのも、たまたま使っていた教科書に出てきたドイツ人の名前がHansとちょっと古風だったので、ドイツ語の名前にも流行り廃りがあるのだということを説明しました。

このテーマについては、以前のブログにも書いた通りです。

tetsuyakumagai.blogspot.jp

この記事でも紹介しましたが、beliebte-Vornamen.deというサイト(他にもたくさん類似のサイトがあります。犬の名前の人気ランキングなんてのもありました)を見ると、毎年ごとの人気の名前ランキングが掲載されています。

www.beliebte-vornamen.de

昨今の人気は、日本と同様、呼びやすくて国際的に通用しそうな名前です。男の子ならBen、Jonas、Leon、Paul、Finnなど、女の子ならEmma、Hannah、Mia、Sofiaなどが人気上位に並んでいます。フリードリヒやヴォルフガングやエリーザベトやグードルーンといったいかにもドイツっぽい名前は、今日もはやあまり人気はないのです。

 

人気の名前の移り変わり

beliebte-Vornamen.deを使うと、さまざまな名前がこれまでどのくらい人気があったかを見ることもできます。教科書に出てきたハンスの場合はこのようになります。

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ハンスという名前は、伝統的な名前で、1950年代までは人気の名前上位にずっとあったのですが、60年代から徐々に凋落し、現在ではあまり名付けられない名前となってしまったそうです。

昔の名前が廃れるのは当然かもしれません。しかし、ハンスと同様大昔からあるアレクサンダーという名前は今日も人気ランキング上位にあります。

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面白いことに、グラフを見るとこの100年ずっと上位にあったわけではなく、ちょうど第二次大戦ごろまでは、あまり人気上位ではなく、「アレクサンダー冬の時代」だったことがわかります。

 

同姓同名の学生が教室にいたらどうするか? 

さて、そろそろ今日の本題ですが、今回名前の話をしながら私が思い出していたのは、かつて自分のクラスにいた、同姓同名の男子学生たちのことでした。

はじめに同姓同名の学生たちを見たのは、2012年の滋賀県立大クラスでのことでした。山田健吾くん(仮名)がクラスに二人いて、初めは大いに驚いたのですが、たしか学科が違っていたので、〇〇学科の山田健吾くんと××学科の山田健吾くん、と区別していたように思います。

そして昨年の神戸大のクラスにも、西村拓也くんと西村拓哉くん(仮名)とふたりまったく同音の学生がいました。今度は漢字は違うものの、学科専攻が同じなので、名前を呼ぶ際に区別をするすべがありません。これには本当に困りました。

 

ならばこっちが名前をつけよう

結局1、2週考えた結果、彼らにこちらからドイツ語クラス用の名前をつけることにしました。名簿の順番が先の方がエリアスくん、後の方がフェリックスくんと人気ランキング上位の名前をつけて区別することにしたのでした。ふたりとも、なんでその名前?と訝しげな表情をしていましたが、名前とは本来勝手につけられるものです。たいせつな本名のほかに、教員が学生を勝手に名付けるなんて、乱暴であることは認めます。とはいえ、こうするのが一番わかりやすかろうと思ったので、二人にも納得してもらいました。

その後私たちのクラスでは、西村エリアスくん、西村フェリックスくん、と出席を取るときに呼ぶようになり、クラスの学生たちにもエリアス、フェリックスはそこそこ普及していたように思います。

 

名付けた本人が忘れそうになる

これで問題解決と思いきや、そう簡単な話ではありません。ときどき、どっちがエリアスかフェリックスかわからなくなって迷うことがありました。よく考えるとちょっと似た名前にしてしまったため、自分で区別できなくなっていたのです。まったくバカな話です。普段の授業では、名簿にミドルネームも書くことで間違えないようにしました。

小テストのときなどは、二人ともエリアス、フェリックスと書いてくれるのでわかりやすかったのですが、期末テストの成績登録のときにはやはり迷いました。ウェブの採点ページでは、名簿に点数を入力するのですが、当然ミドルネームを書いておく欄などはないので、学籍番号と「やの字:也または哉」で区別しました。

ほかにこれまで同姓同名の学生がいたことはないのですが、すでにこの6年間で2回も遭遇しています。3回目もきっと遠からずあるでしょう。そのときどうするか、いまから考えておかなければなりません。