ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

20年ぶりのベルリン滞在(1)

 

20年ぶりのベルリン

前回ゲッティンゲンについて書きましたが、二日間過ごしたのち、ベルリンに移動し一週間過ごしました。

schlossbaerental.hatenablog.com

ベルリンは、学部時代に短期語学講習*1で2回、さらにその時できた友人を訪ねたりで、1年ちょっとの間に合計5ヶ月くらいを過ごした思い出深い街です。最近も、2013年、15年にちょっとだけ訪問していますが、いずれも一泊だけ。今回のように連泊する滞在は、実に20年ぶりとなります。ベルリンが嫌いになったわけではないのですが、東京を離れて約20年くらい地方都市で暮らしているし、ドイツ滞在時もドレスデン、ライプツィヒ、ミュンヘンとそこそこの都市が居心地が良くて、なかなかベルリンに行く機会がありませんでした。

今回、約20年ぶりにベルリンで一週間を過ごして、22歳ごろの自分がどんなことを考えながらこの街にいたのか、何度も思い出しました。短い滞在でしたが、やはりかつてと変わらないすてきな街だなと実感しています。

 

かつては都会の秘境駅みたいだったHauptbahnhof

ゲッティンゲンからのICEで着いたのは、ベルリン中央駅(Hauptbahnhof)です。

f:id:doukana:20190814135637j:plain長距離列車用のホームと、Sバーン(環状線的なもの)の線路が並んでいて、それほど大きな駅には見えないのですが、

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吹き抜けから下を覗くと、地下にある別のSバーン駅や、ショッピングモールなどが広がっているのがわかります。大阪で一番大きいJR大阪駅や阪急梅田駅のすぐ近くに住んでいる私ですが、梅田よりもはるかに都会だと思いました。

今でこそ、大都会ベルリンの玄関口となっている中央駅ですが、私が学部生だった98年には、周辺に何もない都会の秘境駅のような、Lehrter Stadtbahnhofという駅でした。この駅でおりても周辺には何もなく、ただホームの上から工事現場を眺めたことを覚えています。

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98年2月末ごろ、駅の端からポツダマープラッツ方面を撮影。

昔の状態を知っていると、いったいどうやってここまで立派な駅ができたのだろうかと信じられない思いです。

 

ブランデンブルク門近くのアパートメントに泊まる

今回宿泊したのは、ブランデンブルク門からほど近いところにあるアパートメントでした。1970年代ごろに建てられた巨大な集合住宅を改装し、旅客用にしている部屋でした。

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ブランデンブルク門やウンターデンリンデンは、すっかり観光地化して、いつも観光客で賑わっていました。

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アパートのすぐ裏には、虐殺されたヨーロッパユダヤ人の記念碑がありました。

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同じ形の建物が数百メートルにわたって連なっています。東独時代に建てられた集合住宅のようです。

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私の住んでいた棟の裏にかつては総統の地下壕(Führerbunker)があったというので、毎日たくさんの人がスタディツアーなどに訪れるのを見ました。

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室内の様子です。リビング、キッチン、ベッドルームで合計60㎡ほどある非常に広々したアパートでした。(これまでウィーン、ミュンヘン、ライプツィヒなどでアパートメントホテルを利用してきましたが、ここが一番広い部屋でした)部屋はこれほど広くなくてもいいのですが、それより洗面所に洗濯機があることがありがたかったです。

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しかしこの洗濯機、初めて見る形でした。異世界の家電のようです。ベルリンに来た時点で三日目で、そろそろ洗濯をしたい頃だったので、四日目にスーパーで買った洗剤で洗ってみました。特にトラブルなく洗えたし、洗剤も自宅で使っているアリエール・ジェルボールとほとんど変わらない匂いでした。

 

Potsdamer Platz周辺を歩く

アパートからベルリン州立図書館までは、1.5kmくらいあります。やや遠いのですが、毎日歩いて通いました。(6日目に、アパートのすぐ前から図書館前まで行くバス路線をやっと見つけました)。

充実した巨大ショッピングモールMall of Berlin

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アパートから2ブロック先に、巨大モールMall of Berlinがあります。(ローカルなたとえになりますが、大都会の真ん中に西宮ガーデンズがあるような感じです)ここがすばらしく充実していて、何度か来てみました。たくさんのショップや飲食店が入っていて、買い物や食事ができます。20年前に何があったのか全く覚えていないのですが、きっと近年大きく変わったのでしょう。

www.mallofberlin.de

 

電動スクーターが大人気

この巨大モールと同時に私を驚かせたのが、街のあちこちに置いてある、電動スクーターでした。

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調べてみると、スマホのアプリで会員登録をすれば誰でもすぐ使えるものらしく、多くの旅行者も利用しているようでした。(こちらのサイトが参考になりました)

dev.classmethod.jp

ミュンヘンでは見たことがなかったのですが、ベルリンのように車道・歩道がどこも広々している街にはちょうどいいかと思いました。ただ、無音で歩道を走るので、衝突事故や飲酒運転による事故も多数報告されています。今後法規制が厳しくなることも考えられます。

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東側はモールオブベルリンとともににぎやかになったライプツィガープラッツ。

西側にあるのがポツダマープラッツです。

 

ベルリンの新都市、ポツダマープラッツ

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中央にある見張り台のようなものはVerkehrsturm(信号塔)といい、かつてポツダマープラッツがベルリンの中心だった頃に使われていたものを再現したのでしょう。

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ウィキペディアドイツ語版ページより。1927年の写真だそうです。

この場所は98年の滞在時にも訪れていました。

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DB(ドイツ鉄道)のビルがまだ建設途中です。このビルだけでなく、広場周辺はクレーンだらけで、まだ何も機能していないように見えました。工事現場を見学するための観光地でした。

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広場の地下にあるSバーン駅には、広場の地図と、どのように広場周辺が変わっていったのかを数百年前の地図や写真と比較する展示があります。

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また、地上にはかつてこの広場の上にあった、ベルリンの壁が展示されていました。ちょうどこのあたりに壁が作られたため、統一直後はポツダマープラッツは何もない場所だったのです。今ではまさにベルリンの新都心となっています。

 

ベルリン州立図書館にいってみた

ポツダマープラッツを過ぎてしばらく歩くと、今回の滞在の目的地、ベルリン州立図書館(通称Stabi)があります。

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外観は、すぐ通りを挟んで向かいにあるフィルハーモニーと共通している金色の壁が特徴的です。

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広々したエントランスです。右のほうにある申し込みコーナーに、利用申込書(あらかじめダウンロードして記入するといい)を提出すると、すぐに利用証が作れます。

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ウィーンの国立図書館やフライブルク大学でも使っていた、ゼータのスキャナです。スキャンは一回5.5セントです。スキャナを使うには、利用者カードにスキャン料金をあらかじめ課金してもらう(Kartenaufladung)必要があります。めんどうなのは、課金の手続きを、いちいち職員さんにお願いしないといけない点でした。ミュンヘンのように、自販機でいいのにと思いました。

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閲覧室はたくさん机があり、場所はいくらでも取れるのですが、開架の図書の配置が複雑すぎて、何度も迷いました。

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私は館内の端の方にあるコインロッカーを利用していました。これまで訪れた州立、国立の図書館より数倍大きいので、座って本を読む場所はいくらでもあります。かつては何かに使われていたっぽいのに、いまは誰も使用しない、打ち捨てられたような場所が館内にいくつもありました。薄暗い建物の隅に、じっと動かずに本を読む人がいたり、トイレを探していたらいきなり声をかけられて驚いたりしました。

上の写真に写っているロッカーですが、やっかいなことに、キーに番号などはまったく付いていないので、ロッカーを決めるときに番号もメモしておく必要があります。

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注意!ロッカーの番号をメモしておいてください、鍵には何も書いてません。

私はこの注意書きを全く無視していたので、1日目にロッカーの間をしばらく彷徨うことになりました。(あとで分かりましたが、エントランスにあるクロークなら無料で荷物を預かってもらえるし、歩く距離も短くてはるかに便利です)

今回、いつも使っているミュンヘン州立図書館BSBではなく、Stabiに来たのは、Stabiの方が、本を予約してから書庫から出してもらうまでの時間が非常に短いからでした。BSBの場合、予約から3営業日くらい時間が必要(金曜日に注文した場合は水曜くらいになってしまう)なのですが、Stabiの場合は早ければ三時間、遅くても1日後には本が出てきていたので、一週間以内の滞在ながら、たくさんの本を見ることができました。

この点は非常にありがたかったのですが、古い資料だとコピー制限があったり、あとはコピーコーナーと閲覧室のデスクがずいぶん遠かったりして、全体的にはBSBのほうが使いやすいように感じました。

 

以上、ベルリン滞在の感想1回目でした。図書館周辺以外のベルリン散策については、次の記事で書きます。

*1:当時は、東京の大学に通っていたので、首都の大学生である自分は、やはりドイツでも首都の語学学校に通うのが当然だろうということでベルリンを選びました。大人になった今では、ベルリンよりももっと田舎の方が友達ができたりしてよかったかもと思います。