ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

ウィーンブルネン巡り(1)市内北部

3度目のウィーン滞在

8月22日から29日まで、ウィーンに滞在し、オーストリア国立図書館で調査を行いました。今回は、2015年夏、16年春につづき、3度目のウィーンでの調査です。

研究者として訪れる前にも、じつは1度だけウィーンに来ています。1998年の春に、ベルリンでゲーテインスティテュートの授業を一ヶ月受けたあとで、ポーランドチェコオーストリアハンガリースロヴェニア・イタリアと、中央ヨーロッパを縦断する旅をして、そのときにウィーンで三日ほど過ごしました。

 

初ウィーンの思い出

ウィーンのブルネンを紹介する前に、ちょうど思い出したので、1998年に初めてウィーンを訪れた時のことを振り返っておきます。

ポーランドワルシャワ、クラコフを見たのち、プラハチェスキークルムロフを経て、鉄道でウィーンにやって来ました。ちょうど3月10日くらいだったと思います。ウィーンに鉄道でくる、というとウィーン西駅やウィーンミッテ、あるいは最近オープンした中央駅に到着、というイメージがありますが、私は当時、市内北部のフランツ・ヨーゼフ駅からウィーンに入りました。

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あのころ、この街のことをどれだけ知っていたかは、今となってはよくわかりませんが、たしかロンリープラネット中央ヨーロッパの巻だけを持って旅をしていました。地球の歩き方に比べて親切とはいいがたい(とはいえ、宿泊のページには、キャンプや野宿ができる場所からホテルまで紹介されていました)ロンリープラネットの地図を見ながら、私はウィーンを歩きました。

今思うと明らかに間違っているのですが、フランツ・ヨーゼフ駅からブルクガッセのユースホステルまで、徒歩で移動しました。グーグルマップで確認すると、たしかに3kmほどなので歩いていけないこともないのですが、ウィーン旧市街は道が入り組んでいたので、何度も迷って1時間以上かけてたどり着きました。

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(Stadtparkにて。天気がいいのでビールを飲んでいますが、寒かったです)

その後、ユースホステルの隣にある、もっと安いホステルに泊まって、美術史博物館やシュタットパークなどを散策しました。オペラ座に行って、ヴァーグナーを立ち見したりもしました。結局いちども公共交通機関を使うことはなかったと思います。

 

2015年夏、17年ぶりの滞在

それから17年ほど間が空きましたが、2015年にまたウィーンに来て、資料調査をしています。私の研究領域は、基本的にドイツなので、別にオーストリアに来なくてもいいのですが、世紀転換期ウィーンの文化にも関心があり、ドイツでは見つけられない資料もあるかもしれないと期待して、ウィーンにも行ったわけです。

2015年夏の滞在時に驚いたのは、ウィーンの都会ぶりと暑さでした。

ドイツをフィールドとしている私にとって、現代のオーストリアというとのどかな田舎ばかりの小国、あるいはドイツの属国的なイメージしかありませんでした。ちょうど京都府に対する滋賀県のような関係だろうと想像していました。

たしかにオーストリアの大部分は田舎だし、谷あいの山村もたくさんあります。しかし、ドイツの属国ではぜんぜんないし、ウィーンはやはり一国の首都だけに、ミュンヘンや京都よりもずっと都会だと感じました。

そして、何より暑さに苦しめられました。連日昼間には30度を超える猛暑はまったく予想外だったので、ほとんど夏バテのようになってしまいました。

 

しかしこの滞在で、ウィーンの街の雰囲気や、オーストリア国立図書館の便利さがよくわかりました。

 

今回の滞在は、2年前と同じ18区

2016年春にもウィーンに十日ほど滞在して、図書館に通い、ハーフマラソンに出場しました。このときは、市内南部、ベルヴェデーレ宮殿近くのアパートメントホテルに泊まっていましたが、騒音が気になったので、今回はもう少し静かな場所を選びました。

2年前に滞在した、ヴェーリンガーシュトラーセ駅から近いアパートメントで一週間過ごしました。このアパートメントは、近所にスーパーやレストラン、駅などがあり、また徒歩10分ほどで大きな公園もある、落ち着いた住宅地でした。

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ちょうどトラムの停留所が近く、アパートからトラムでウィーン大学前のショッテントーアで乗り換え、さらに5分くらいで国立図書館まで行けました。

今回の滞在時は、これまでまだ訪れていないところを中心にブルネンの写真を撮りました。

 

旧市街北部、アルザーグルントからアウガルテンへ

ウィーンで今回なんとしても見たかったのが、有名なシュトルードゥルホーフ階段でした。前回の滞在時に、知人から、「この街のどこかに、階段の途中に噴水がくっついた有名な場所があるらしい」というRPGの村人の話みたいな漠然としたアドバイスをもらいながら、どこにあるどんな噴水なのかまったくわからなかったところです。その後、別の知人の研究発表などを聞いて、どこにあるのか理解しました。

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このシュトルードゥルホーフ階段は、20世紀半ばのオーストリアの作家、ハイミート・フォン・ドーデラーによる同名の長編小説で有名です。現在も、美しいウィーンの風景として愛されています。

 

シュトルードゥルホーフ階段からほど近いところにあったのが、シューベルトブルネンです。独特の身振りをしている女性像は、聞き耳をたてているらしいです。

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この噴水から東に進むと、さきほど写真を上げたフランツ・ヨーゼフ駅、さらに東に行くと、ドナウ運河を渡って、アウガルテンにたどり着きます。

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ドナウ運河に架かる橋。道頓堀のように、飛び込み防止の柵がつけられています。

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昔から生活用水として用いられてきたようなブルネン。おいしい水が出ていました。

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こちらもアウガルテン手前で見つけたブルネン。

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アウガルテンは、広大な庭園の中に、第二次大戦中に作られた高射砲塔が残されています。ウィーンに高射砲塔はいくつか残っていて、マニアに人気です。

 

18区の公園トゥルケンシャンツパークの噴水

泊まっていたアパートメントから北西に進むと、だんだん登り坂になっていて、きれいなお屋敷が増えてきます。ウィーンは、パリと同様、市の外側から内側へと下り坂になっています。

走って10分くらいで、きれいな公園、トゥルケンシャンツパーク(Türkenschanzpark)に着きます。ここは1683年の第二次ウィーン包囲のさいに、オスマン帝国軍が駐留した場所なのだそうです。それでトゥルケン(トルコ人)のシャンツ(保塁)なんですね。

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園内には私のようにジョギングをする人や犬の散歩をする人、日光浴をする人など、多くの人が訪れています。だいたい一周1.5kmほどのジョギングコースがあります。また、庭園の中心部には、川や池が設けられており、当然噴水もありました。

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Prießnitzbrunnen:自然療法家として知られるプリースニッツを記念したブルネンです。

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作家アルトゥール・シュニッツラーは、この公園の近くに住んでいたそうです。

 

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庭園で花に囲まれて読書をする人や、カフェでアイスを食べる人など、優雅な時間を過ごしていました。

 

トゥルケンシャンツパークからアパートへ戻る間に、ウィーン大学天文学研究所がありました。公園はきれいに整備されているのに、こちらの施設は、藪というかジャングルというか、かなりワイルドな状態でした。

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ウィーン大学天文学研究所の入り口。入り口だけど、先が見えない。

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里山のような森の中に、天文学研究所の建物がありました。建物の最上階には、天文台があります。

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出口(Ausgang)と書いてあるけど、本当に出られるのかいまいち信じられないと思いつつ進みました。

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森の中の小道というか、人の踏み入らない藪です。

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心配しながら階段を降りると、出口の門がちゃんとありました。

長くなってきたので、今回はここまでです。

次に、王宮やシェーンブルン宮殿などの噴水を紹介します。