ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

ウィーンの自然史博物館 動かない動物園?

国立図書館プルンクザール

いよいよ今年も終わりなので、これまでに途中まで書きかけて発表していなかった記事を紹介していきます。

 

今回は、8月22日から8月29日まで、ちょうど一週間滞在したウィーンについて書きます。

ウィーンではおもに、ホーフブルク宮殿となりのオーストリア国立図書館(ÖNB=Österreichische Nationalbibliothek)に通っていました。*1

王宮内にも、国立図書館プルンクザールという美しい図書館がありますが、こちらは見学はできますが、文献の閲覧等はできない書庫です。

www.wien.info

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私が通っていた図書館については、以前書いた記事をご参照ください。

schlossbaerental.hatenablog.com

ミュンヘンの州立図書館とオーストリア国立図書館のスキャナを比較しています。

双子の博物館KHMとNHM

国立図書館がある英雄広場(Heldenplatz)の向かいには、マリア・テレジアの大きな像をはさんで、大きな二つの全く同じ形の建物が並んでいます。

南側にあるのが、美術史博物館。北側にあるのが、自然史博物館です。

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こちらが美術史博物館。南側に立っていて、入り口は北向きなので、昼間は日陰になる。

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美しいカフェも有名。

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バベルの塔や、アルチンボルドなど、最近話題になった絵画はほとんどここで見られます。

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廊下や階段の装飾もすごいです。 

私も1998年に初めてウィーンに来た時、そして2年前に資料調査できた時もこの美術館を訪れています。

しかし、すぐとなりにある自然史博物館については、よく考えたらこれまで一度も足を踏み入れたことがありませんでした。

 

自然史博物館に行くことにした

ちょうど初夏のころに読んだ作品に、自然史博物館の標本の話が出てきました。

オーストリアの山村で暮らす家族の三世代にわたる歴史を面白おかしく描いた作品です。序盤に、怪我をしてきこり仕事ができなくなった男が、じつは寄生虫をお腹に抱えていて、自分のお腹から出てきた寄生虫について調べるうち、医師になろうと思い立って、村を出て行く、という場面が出てきます。

Blasmusikpop oder Wie die Wissenschaft in die Berge kam

Blasmusikpop oder Wie die Wissenschaft in die Berge kam

 

 著者のヴェア・カイザーさんの朗読会を大阪で聞きましたが、非常に面白かったです。

カイザーさんは、NHMにある寄生虫の標本におどろいて、この作品の中に寄生虫を登場させたと言っていました。それを聞いて、せっかくなので今回の滞在中に見に行ってみようと思ったのでした。

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美術史博物館と全く同じ形の自然史博物館。入り口が南に面しているのがNHMです。

 

自然史博物館と万物の発達史

博物館に入り、入場料を払ってどこから見たらいいかと、パンフレットを見てみました。(入場料についても書いておくと、美術史博物館が大人一人15ユーロであるのにたいし、NHMは10ユーロと割安です)

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最初は岩石とか微生物から始まり、徐々に爬虫類、両生類、哺乳類へと進んで行く、生命進化の歴史を辿れるようになっています。

 

はじめは石ばっかり

入り口から入って最初の部屋は、鉱物の部屋です。色とりどりの大小さまざまな石が並べられています。

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エントランスホール。

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鉱石ゾーンで興味を惹かれたのは、このような工芸品でした。これは石でできた盆栽です。

 

恐竜のロボットに子供が大興奮

鉱物や化石の展示を超えると広い部屋に出ます。人だかりができている一角に近づくと、恐竜の化石や化石を復元したロボットがありました。

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こちらが中にモーターが入っている恐竜ロボットです。けっこう早く動いていたので写真がブレています。

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男子が夢中で見入っていました。

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こちらはトリケラトプスの頭部。

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これはなんでしょうね。大型哺乳類の化石でしょうか。

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マンモス親

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足元にはマンモス子。子供といっても毛むくじゃらで大きいです。

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原人の生活ぶりを再現したコーナー。

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この博物館の収蔵品の中でも有名なのが、このヴィレンドルフのビーナスです。日本の土偶と似たようなものですね。思ったよりずっと小さかったです。

 

2階は剥製の動物園

一階の鉱物や化石の展示を見終えて、二階に上がると、徐々になじみのある生き物の展示が増えていきます。はじめは、微生物や無脊椎動物、カイザーさんの本にも出てきた寄生虫などのホルマリン漬けが並んでいます。

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寄生虫のホルマリン漬けを撮るのを忘れたので、代わりにタコを。

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鳥類の剥製コーナー。さまざまな種類の鳥がいました。

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小型哺乳類。これはウォンバットでしょうか。

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カワウソかと思ったのですが、北米の地図が後ろにあるので、プレーリードッグでしょうか。

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大型哺乳類ということで、キリン、ゾウ、クジラの部屋。

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アルパカですね。ふかふかしていてかわいいです。

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ここは大型肉食獣の部屋なのでしょうか。奥にライオンがいます。手前はヒグマやシロクマです。

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大きなクマの下には、子ぐまもいます。これはかわいい。

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動物園の猿山と同じように、岩場に猿の剥製が集っていました。

 

 

全体を見て回るのに、1時間以上かかりました。ゆっくり見ていたらもっと時間がかかったでしょう。この日は非常に暑い日で、館内でもなかなか汗が引かなくて困りました。もう少し涼しかったら、じっくり標本を見たり写真を撮ったりできたのに、と思います。今回記事にするにあたり、4ヶ月前に撮った写真を見直していたら、また行ってみたくなりました。

美術史博物館は、いつ行ってもちょっと混んでいるし、絵画を眺めるのにはそれなりに集中力が必要です。それに比べると、こちらの自然史博物館の方が、リラックスした気持ちで見て回れるような気がします。 動かない動物の展示ばかりですが、動物園にいくのと変わらない満足感が得られますよ。

*1:オーストリアの公共の機関って、たいていオーストリア(Österreich)の頭文字Öから始まる略称で呼ばれます。鉄道はÖBBなど。Macで毎回Öを入力するのがけっこう面倒です。