同じ本を二冊以上買ってしまう
同じ本を買ってしまう、あるいはすでに買った本を献本でいただくことが、ときどきあります。同じ本を買ってしまうことって、何といえばいいのでしょう。「ダブり買い」でしょうか?調べてみたら「重複購入」というのが正式な言い方のようです。
こちらの記事では、コミックや小説で重複が起こりやすいというアンケート結果がでていましたが、私の場合、ちょっと違うように思います。いい機会なので、重複本を探してみました。
重複購入が起こりやすいのは文庫・新書か?
重複購入が起こりやすいのは、私の場合は文庫や新書です。理由としては、うすく、小さいし、本棚でそれほど存在感を主張しないからではないかと思います。
すぐに確認できた重複購入の本は以下の通りです。
山本芳久:『トマス・アクィナス—理性と神秘』(岩波新書)
倉谷滋:『進化する形—進化発生学入門』(講談社現代新書)
井上亮:『忘れられた島々「南洋群島」の現代史』(平凡社新書)
マルクス・エンゲルス:『ドイツ・イデオロギー』(岩波文庫)
ボルヘス:『語るボルヘス』(岩波文庫)
ニーチェ:『悲劇の誕生』(岩波文庫)
マルクスにせよボルヘスにせよ、何となく読んでおきたいと思って買ったけど、岩波文庫から薄めの本が何冊か出ていて、どの本を買ったか忘れてしまったので、重複買いになったと考えられます。(↓本棚右端に2冊同じボルヘス)
ニーチェ『悲劇の誕生』は、学部生のころに少し読んでいましたが、持っていたことすら忘れていました。昨年仕事で急に必要になり、研究室の書架を確認するのがめんどうで、買い直しました。
結婚後両方が買っていたことが分かったパターン
わが家は人文系研究者夫婦なので、ときどき重複して持っていた、あるいはそれぞれが買っていた本があります。
千野栄一:『外国語上達法』(岩波新書)
この本は、外国語を専門に勉強した人であれば、一人一冊レベルで持っているでしょうから、当然ですね。
西田幾多郎:『善の研究』(岩波文庫)
京大生、京大出身者は一度は読むらしい本です。この本は、妻も一冊持っており、さらに私は研究室に二冊も所蔵していました。
文学全集や研究書もだぶり買い
ヤセンスキー、アンドリッチ:『ばかあかい パリを焼く』(集英社版世界文学全集20世紀の文学、31巻)
『ばかあかい』ずっと昔に友人に勧められて買ったのですが、完全に忘れていて、数年前に『パリを焼く』が読みたいと思いもう一度買ってしまいました。
エッゲベルト、横山滋:『ドイツ神秘主義』(国文社)
専門書の場合はわり買った本を覚えているし,アマゾンで購入した場合は履歴が表示されるので間違いはそう多くありません。『ドイツ神秘主義』のように、古書(とりわけ古本市)で購入すると、重複購入の危険性が高いと思っています。古書市は、興味はあるが今すぐに必要ではない本を買う場だからでしょう。
schlossbaerental.hatenablog.com
以前のブログにも書いた、百万遍古書市では、買った本のうち2点が重複でした。
『ドイツロマン派全集 アイヒェンドルフ』、『ノヴァーリス』、『シュレーゲル兄弟』(国書刊行会)
これは数年前に消費税が上がるというので大急ぎでほぼ全巻セットを購入したため、すでに持っていた数冊と重複が生じました。
古い版と新しい版(文庫とハードカバー)を両方買ってしまう場合
クリストファー・マッキントッシュ、吉村正和:『薔薇十字団』(平凡社、ちくま学芸文庫)
こちらは大学院生のころに文庫版を買っていたのに、すっかりわすれていて最近ハードカバー版を買っていました。
牧村健一郎:『獅子文六の二つの昭和』(朝日選書)、『評伝獅子文六—二つの昭和』(ちくま文庫)
獅子文六が再評価されていますが、研究書や伝記はほとんど出ていません。私はうれしくて書店で見つけてすぐに買ってしまいましたが、のちに同じ著者の書いた、ほぼ同じ内容の本と分かりました。
車谷長吉:『赤目四十八滝心中未遂』(文芸春秋)
ハードカバー版を大学生の頃に読んでいたく感動しましたが、その後紛失してしまい、作者が亡くなった直後(2015年秋)に読書会で報告をすることになり、文庫判を買い直しましたが、のちにハードカバーを発見しました。実は関西に移住するきっかけとなった本の一つです。
もらったのに買ってしまう場合
小関隆『イギリス1960年代―ビートルズからサッチャーまで』(中公新書)
道籏泰三『堕ちゆく者たちの反転』(岩波書店)
いずれも恩師からのいただきものです。研究室と自宅に一冊ずつ置いています。
ダブり買いではなく、同じ作品の新版、新訳を買うことは多い
ゲーテ『若きヴェルターの悩み』、リルケ『マルテの手記』、トーマス・マン『トーニオ・クレーガー』など
これらの作品については、岩波、ちくま文庫、集英社、光文社新訳文庫、全集版などたくさん持っています。論文や、授業資料等で訳を比較することがあるからです。大学院生のころに、『若きヴェルター』を読書会で読みましたが、みんなで6種類くらいの邦訳を比較しながら読み進めました。こういうことも有名な作品を読む楽しみです。
獅子文六『悦ちゃん』
大好きな小説です。たしか大学院に入った頃に、古書店でみつけた角川文庫版で読み、のちに全集を買い、さらに近年ブームになってきて再刊されたちくま文庫版も買いました。朝ドラのようにテンポがよくて明るく、だれもが安心して楽しめるのが獅子文六作品の特徴であり、『悦ちゃん』にはその要素が凝縮されています。