ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

4コマの教育への活用法

先日の期末試験

大学教員の皆さんは、今月まで学期末試験の監督や採点、成績登録等、学年末の業務に追われていたことと思います。私も本務校と非常勤合わせて、8コマ分のテストがありました。しかし、専任教員の場合、自分のクラスに加えて他の大講義室講義科目の試験監督補助をしないといけません。*1

普段使わない教室で、大人数の学生を相手にしないといけないので、監督補助はわりと気を使う仕事です。何コマも担当すると疲れます。しかし、日頃教えている自分の専門とは全く異なる授業科目の試験を見るのはけっこうおもしろいものです。

私は文学部出身なので、学生時代の試験というと、講義科目はレポート、語学や購読は、今自分で行なっているような語学のテストだったので、社会科学系科目のテストのイメージがほとんどありませんでした。(教職課程で履修した日本国憲法の試験くらいしか自分で受けたことはありません)

経営学部の専門科目のテストは、用語を説明する問題、電卓で計算をする問題、長文の論述、マークシート方式とさまざまな形式があります。

 

4コマを作るテスト問題

今回の監督補助で担当したある科目のテストは、4コマを解答用紙に描くというものでした。(当然他の先生のテストなので、どんな科目のどんな内容かは詳述しません)。私は専門外なので、学生たちがどのような授業を受けてきているのかはわかりません。

しかし教室に集まっている200人以上の学生たちは、テストが始まるや、鉛筆でがりがり答案を書いていました。机間巡視しながら、解答の様子を見ましたが、絵が上手な学生、吹き出しのセリフがぎっしり詰まっている学生、なかなか手が動かない学生など、さまざまで、なるほどこれはおもしろいと思いました。

素人目にも、よくできている答案はわかります。文字の量、絵と説明のバランス、全体的な流れのわかりやすさなどが、差がつくポイントとなりそうでした。また、絵の上手い下手などはむしろ問題とはならないとも思いました。

 

ドイツ語授業における4コマ漫画作成

4コマをつくるというのは、すでに私の授業でもやったことがありました。

schlossbaerental.hatenablog.com

以前の記事に書きましたが、ネットで人気のやる夫・やらない夫のイラストを12種類用意し、そのなかから4種を選んでお話を作り、ドイツ語でセリフや説明を書くという内容です。

このワークを通じて、ドイツ語作文やプレゼンテーションにおける流暢なドイツ語発音などを身に付けることが目的でした。

神戸大学と本務校で実施しましたが、グループによる出来不出来の差が大きいし、なによりそもそものお話作りの部分がかなり難しいと気づきました。

 

3枚の紙を使ったプレゼン練習

かつて京都精華大学で初年次演習を担当していた頃、パートナーの先生から教わった、アイスブレイクの方法で、3枚の紙をつかった自己紹介プレゼンテーションというのがありました。

A4用紙と色ペンを配布し、それぞれ1枚ずつ自分を紹介するキーワードとそれにまつわるイラストなどを記入し、出来上がったらグループごとに自己紹介をします。

たとえば私であれば、「ドイツ/ドイツ語」、「栃木」、「マラソン」のように、3つのキーワードを決めて、プレゼンをします。

このような形でのプレゼンテーションは、初級ドイツ語授業に取り入れることは十分可能でしょう。紙芝居形式ではありませんが、教科書を参考に、家族の紹介や自分の趣味についてパワポでプレゼンをするというのは毎年実施しています。

 

講義科目でも使えるのでは

ドイツ語や基礎ゼミだけでなく、ドイツ文学や歴史をあつかう講義でも、4コマを使ったプレゼンテーションを取り入れることはできそうです。

文学作品であれば、ポイントをわかりやすく伝えながら、物語をまとめる練習になります。また、歴史的な出来事についても、どこで、だれが、いつ、何をしたという必要な要素を盛り込みつつわかりやすく人に伝えることは非常に学習効果が高いでしょう。 

何でもかんでも4コマ漫画的に単純化すればいいというわけではありませんが、情報の取捨選択、伝えるべきポイントをどう絞り込むか、というのは、思考方法の一つとして練習しておく必要があるでしょう。

実際に授業で見ていると、小説の概要をまとめるとか、歴史的出来事の経過をまとめるというような、要約して伝えることを苦手としている学生が多くいます。

細部に着目し、じっくりと論述する訓練と同様、要約や単純化でわかりやすく伝える訓練も取り入れていいのではないかと思います。

 

昔描いた4コマ。自動貸出機の使い方

京大大学院時代、私は総合人間学部図書館でアルバイトをしていました。たしか2005年ごろ自動貸出機が導入されましたが、始めの頃は学生たちがなかなか使い方がわからず、職員がいちいち機械を操作しないといけないことが多々ありました。このままでは、自動化した意味がまったくない、そう思った私は、4コマ漫画で自動貸出機の使い方を解説することにしました。

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10年以上前のガラケーで撮った写真なので、拡大しても字が読めませんでした。残念。パンダが貸出機にどういう向きで本を置いたらいいか解説しています。

そのうちに誰もが当たり前のように貸出機を使えるようになりました。ある程度この4コマ漫画も役に立ったのでしょう。 

おまけ その他最近知った授業に役立ちそうなワーク

1年生クラス用、街で見つけた外国語を探すグループワーク

先日の部局内(第二外国語)での研究会で、韓国語の先生がいろいろ画期的な授業方法を紹介されていました。そのなかで、すぐできるし面白そうだと思ったのが、街で見つけた外国語を写真に撮ってグループで発表するというワークです。

韓国語については、勤務先の近くには、日本有数のコリアンタウンもありますし、大阪には旅行者もたくさん訪れるので、町にはハングルがたくさんあふれています。だから学生にとっては、看板や食堂のメニューなどを探すのは容易でしょう。

このようなワークをドイツ語でどうやって取り入れられるだろうかと聞きながら考えました。フランス語であれば、ケーキ屋さんやレストランからマンションの名前までいろいろなところにあふれています。中・上級クラスならば、間違っている看板を探し、どこが間違っているかを調べるなんていう課題も出せそうなくらいです。

しかし、ドイツ語の場合はどうでしょう。街で見つかるのはパン屋さんくらいでしょうか。ネット上の広告を含めたら、自動車メーカーのコピーなんかもあるでしょう。そんなことを考えながら、大阪市内を歩いていると、ある駅前でドイツ語の看板が見つかりました。

 

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創作バルまはと(Macht)ですって。驚きました。意外なところに、意外な語が使われているのだなと思いました。

*1:私の勤務先の場合は100人以上履修している科目だと補助の教員をつけてもらうことができます