ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

中間テストをどうするか?

6月は中間テストの季節

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マラソン大会に出かけていた先週、ちょうど各大学で中間テストや第一クオーターの期末テストが行われていました。

神戸大学ほかいくつかの国立大学では、現在は前期後期を2分割するクオーター制が導入されており、実質的に第一クオーターの試験が中間試験となっています。しかし、クオーター制の場合、前期後期制とは異なり、クオーターごとの合格不合格を登録しないといけないので、従来の二学期制に比べると手間は数倍、教える内容は2割ほど少なくなってしまいます。このデメリットについては、専門の方がちゃんとまとめてくれることでしょう。

二学期制の大学において、ドイツ語の中間テストは義務ではないけど、多くのクラスで実施されていることと思います。私も、多分京大や滋賀県大などで教えていた、非常勤講師としてのキャリアの初め頃には、学期中にテストなんてやる必要ないだろ、と全く中間テストのことなど考えてはいませんでしたが、なんとなくいつの頃からか、6月に入る頃、ちょうど8週から10週あたりにテストを行うようになりました。

 

様々なテストの形態

今回考えたいのは、中間テストとして、どのような方法があり、どのような方法にメリットがあるのか、そして中間テストを通じて、学生たちに何を学んでもらいたいかということです。

中間テスト(クオーター期末試験も含める)として、これまでいくつかの方法を試みてきました。学生のレベルやクラスサイズ、教材や授業の性質(文法重視かコミュニケーション重視か、初級か中級か)を考慮して、最適と思われるやり方を考えてきました。

具体的には、以下の通りです。

 
1)穴埋め、独作文などを中心とするペーパーテスト(期末テストとほとんど同じ出題方式)

クラスにより難易度や問題の量は異なりますが、基本的にはA4両面1枚で1時間くらいを目安にしています。
また、これまでに小テストを何回か行っているクラスであれば、その問題を流用すると、私も楽ができるし、学生にとっても復習になるので一石二鳥です。

2)ペーパーテスト型2:カンペ、辞書持ち込み可。

これは、昨年から2年生クラスで実施しています。ただテストをすると、まったく勉強せずに受ける学生が数人出てしまうので、あきらめずに何でもいいから勉強したほうがいいということを理解させるため、自作のカンニングペーパーA4両面1枚と紙・および電子辞書の持ち込み可のテストにしました。
この方式だと、定冠詞・不定冠詞の格変化といった細かい出題は必要ないし、問題文に名詞の性を補う必要もないので気楽です。また、自由作文(主語、動詞をしていして、それ以外の部分をそれぞれ自由に作らせる)なども出題し、じっくり考えさせるということもできました。
カンニングペーパーには、学生たちの個性が出るので、毎回試験中の机間巡視が面白いです。昨年のクラスでは、単位取得がきびそうだった学生が、教科書と問題集のコピー20ページ分くらいを縮小コピーしてはりつけてきました。彼女は無事にいい成績をとれました。また、別の学生は、A4の紙にメモ用紙を何枚か貼り付け、紙をめくることで情報量を増やすという作戦をとっていました。これには驚き、素晴らしい工夫だと学生を褒めましたが、さすがにA4一枚と分量を限った意味がなくなってしまうので、今年は禁止としました。
期末テストでは辞書もカンペも持ち込み不可ですが、自分で学習内容をまとめるなど、メモを作る工夫がその後の勉強につながるのではないかと期待しています。

3)教科書の例文などを使った、面接形式の口述試験

これは、初級の会話重視クラスで毎年やっている方法です。教科書に出てくる、「あなたのお名前は?」「出身地は?」「住んでいるところは?」と言った定番的な質問に対して、自分のことをちゃんと答えられるかを問う試験です。発音や間違いやすいところは学生一人ひとりによって異なるので、一人ずつの試験で、学生たちそれぞれのでき具合を確認します。

4)グループワークをして、その結果を面接またはプレゼンする口述試験

中級クラスの場合は、グループワークでお互いにインタビューをして、その結果について私が質問し、学生が答えるという形式を実施しています。単に教科書の表現をおうむ返し的に丸暗記するだけでなく、主語を「私」から「彼・彼女」に変えるとどうなるか、といった簡単な応用や、おたがいにわからないところを相談したりするプロセスを通じて、一人で勉強するだけでは気がつかないような気づきが得られればと期待しています。

また、クラスによっては、アンケートの結果をポスターにまとめてドイツ語の文章をいくつかつくってプレゼンをするといった試験もしました。


5)学習塾方式

1と同じような普通のペーパーテスト形式ですが、解答ができたら、採点し、できないところをやり直します。100点がとれれば、終わりですが、できないところがある場合は、授業時間終了までなんども解答と採点を繰り返します。最終的に、授業終了時の点数を成績として登録する、という方式です。
これは、昨年の理工学部クラス(男子8名のみ)で実施しました。できる学生とできない学生の差がはっきりしてしまうので心配でしたが、わりとみんな最後まで全問正解できなくて、似たり寄ったりの成績となりました。学生たちとしては、どこができていないのか、どうすればいいのかをすぐに考えることができるので、採点後に返却し、フィードバックという通常の方式より、学習効果が高いのかもしれないと思いました。


6)課題提出型

これについては、以前のエントリで書きました。以前はグループで動画を作る課題などもやっていましたが、最近では、パワポを使ったプレゼンなどを、PCでドイツ語を入力する練習として実施しています。

schlossbaerental.hatenablog.com

 

中間テストは何のために必要なのか?

ここまで、これまでに実施したいくつかの方法を挙げてきました。

そこで思うのですが、中間テストとは一体誰のために、何のために行うものなのでしょうか。

まず一つは、成績評価のためです。これは当然でしょう。出席点という指標が認められない(当然ですが)昨今、期末テスト以外の平常点として、課題や小テスト、中間テストなどの点数を合算する必要があります。

しかし、成績評価のためといっても、実際のところはちゃんと勉強できる学生は小テストも中間テストも期末テストもちゃんとできるものです。

それでは、中間テストなどおこなったところで、できる学生とできない学生の差が開くだけなのでしょうか。

たしかにそのような側面はありますが、やはり私としては、中間テストは、授業についていけなくなりつつある学生を救済するためにやっていると思っています。救済というと大げさかもしれません。すくなくとも、勉強の仕方を立て直したり、授業で説明したドイツ語の知識を整理する機会になればいいと思っています。

ですから、私としては、中間テストは成績評価のためというより、勉強の仕方や知識を整理して、後半の学習へとつなげていくという意味のほうが大きいです。

 

もっと面白い方法はないのか?

今回はこれまでに試みたいくつかの方法について説明しましたが、もちろん中間テストの方法としては、他にも可能性があるでしょう。他の先生方なら、もっと面白い方法をとっているかもしれません。

グループワーク型や、プレゼンテーション型のように、学生が自律的な活動をしながら、ドイツ語の知識を確認し、表現を組み立てるという方法は今後ももっと行っていきたいし、ペーパーテスト型についても、出題を工夫するなどして、より効果的なものが作れるだろうと考えています。

結局いつも同じ問いにぶつかるわけですが、何を学生に教えているのか、何を彼らに学んで欲しいと思っているのかということが重要なのでしょう。

私としては、冠詞の格変化や動詞の人称変化を正確に覚えることなんていうのはけっこうどうでもいいと思っています。それよりも、授業で吸収した知識を、整理し、運用することができるようになって欲しいと思います。ドイツ語が実生活や大学の学問で役に立つ機会はほとんどの学生にとって無いに等しいといえます。それならば、学び方や、学んだことの活かし方を、ドイツ語の授業を通じて身につけて欲しいと思います。

当然こういうことは、中間テストを工夫するだけで何とかなることではありません。半期15回、そして前期後期と年間を通じて、どんな授業をすればいいのかということも、同時に考えていかないといけませんね。