ドイツ語教員が教えながら学ぶ日々

熊谷哲哉 ドイツ語教育、ドイツ文学、文学じゃないけどおもしろいものなど。

人称代名詞の格変化と所有冠詞の区別について

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新シリーズ、ドイツ語初級文法のわかりにくいところを解説する その1

以前書いた、所有冠詞と2格の区別についての記事が非常に好評だったので、ほかにも学生を教えていていつもなかなか理解してもらえないな、と思う文法事項について、かなり初歩的に説明する記事を書いてみようと思います。

新たなカテゴリ、「ドイツ語文法入門」をつくり、これまで発表した記事とともに、ドイツ語学習に役立つ文法事項の解説記事をまとめていきます。

 

ドイツ語の難しさってどんなところなのだろう?

私の授業に出ている学生たちから、しょっちゅうドイツ語が難しいという意見を聞きます。そしておそらく彼らの親御さんの世代で大卒ならば、ドイツ語を履修し、ちっともわからず、難しかったという記憶だけが残ったという人もたくさんいることでしょう。昨今では、お父さんお母さんから難しいと言われてドイツ語を避けた、という学生の話もよく聞きます。

いやしかし、ドイツ語に限らず何語であれ、違った難しさがあります。そもそも言語の難しさという概念自体が定義しづらいものです。学習者の母語にもよるし、学習レベルに応じて違った難しさに直面するということもあります。ドイツ語ばかりがやたら難しいとも、あるいは学びやすいとも、簡単には言えないなと思っています。

言語としてどう難しいかという議論はともかく、初級文法を教科書に沿って学んで行く際に、多くの学習者がひっかかりやすいポイントというのがあります。

発音にはじまり、動詞や冠詞類の変化など、ドイツ語特有のつまづきポイントについて、ごく簡単に仕組みを解説したいと思います。

今回は、混同しやすい人称代名詞と所有冠詞についてまとめます。

 

ihrが難しい

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ドイツ語の人称代名詞は、英語より少し多くて、9種類あります。

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I=ich, you=du, he=er, she=sieとだいたい同じように対応していますが、何が違うのかというと、二人称が複数に分かれるという点です。要は、英語でyouにあたるのが、du, ihr, Sieと3種類に分かれるのです。

教員と学生、初めて会う人同士の場合などは、一般的にSieが使われます。単数複数とも同じSieで、英語のIのように、常に大文字で書かれます。友達同士や仲間内、家族などで使われるのが、duです。duで呼ぶ対象が複数ならihrを使います。君と君たちとが違う人称代名詞になるわけです。*1

また、英語で私は:I、私に:meと形が変わるのと同様、ドイツ語にも4種類の格変化があります。

以前の記事にも書いたように、1格:〜は、2格:〜の、3格:〜に、4格:〜をといった具合に、日本語の助詞にだいたい相等しています。(しかし100パーセント対応しているかというとそうではないので、そのことについてはあとで別の記事に書きます)

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先ほどの表にあげた、人称代名詞はこのように文の中での役割に応じて形が変わります(格変化)。✴︎人称代名詞の2格は現代ドイツ語ではあまり使いません。

学生たちには、まずこの9種類の人称代名詞を覚えてもらうわけですが、やはり英語と対応していない部分が覚えにくいようです。パートナー練習でよく使うduはともかく、あまりつかわないSieやihrはなかなか覚えられません。

やっかいなことに、ただでさえうろおぼえなihrは、格変化の表を見ると彼女の3格がおなじihrとなるし、彼の3格はihmだし、彼ら・あなたの3格はihnenとなんだかみんな似ているように見えます。

 

所有冠詞も加わるとさらに紛らわしくなる!

以前「〜の」についての記事でとりあげた、所有冠詞ですが、こちらも人称代名詞と似ていて紛らわしいです。

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まずこれが基本の形です。私のはmein、君のはdeinということです。

やっかいなことにまたihrが出てきています。つまり、彼女の、彼らの、あなた・あなたたちのがみなihr (Ihr)となるわけです。

そして、この所有冠詞の後ろには、名詞の性・数・格に応じて語尾がくっつきます。

つまり、

Das ist mein Vater. この人が私の父です。(男性名詞1格)

Das ist meine Mutter. この人が私の母です。(女性名詞1格)

Ich schenke meinem Vater ein Buch. 私は父に一冊の本を贈ります。(男性3格)

Ich kaufe meinen Kindern dieses Spielzeug. 私は子供たちにこのおもちゃを買う。(複数形3格)

おなじ「わたしの」という所有冠詞ですが、後ろに来る名詞の性や格で少し形が異なっているのがわかるでしょうか。

所有冠詞には、どの種類でも決まった語尾がくっつきます。一つのものや不特定なものに付く、不定冠詞einと同じような語尾変化です。

たとえば、彼女のまたは彼らの「ihr」の場合はこのように変化します。

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わかりやすくするために、Computerコンピュータ, Tascheカバン, Buch本, Kinder子供たちと具体的な名詞も含めた形にしています。

この表を見ると、ihren Computerのような語が、先ほど出てきた人称代名詞のihnenにも似ているように見えてこないでしょうか。というより、これだけ似たようなものばかり表で並べていくと、違いを見つける方が難しいのではないかと思えてきます。

 

見分け方を整理しよう

1)語尾がついている、語尾がなくても後ろに名詞が続いているのは所有冠詞

Ich helfe ihren Eltern. 私は彼女の両親を手伝う。(複数3格)

Ihr Mann arbeitet in der Fabrik. 彼女の夫は工場で働いている。(所有冠詞男性1格)

 

2)語尾がない場合=君たちのihr, 彼女・彼らの3格ihr あるいは所有冠詞ihr男性名詞1格、中性名詞1・4格の場合

Wo seid ihr? ふたりとも、どこにいるの? (人称代名詞ihr1格)

(『アイガー北壁』で行方不明になった登山家二人を探す、ヨハンナ・ヴォカレクのセリフです)

人称代名詞の種類を区別するには、動詞の形や前置詞の格支配で見分けることができます。

Lernt ihr Deutsch? 君たちはドイツ語を勉強しているの?(人称代名詞ihr1格)

Er geht heute zu ihr. 彼は今日、彼女のところへ行く。(人称代名詞sie3格)

Ich fahre mit ihnen nach Kobe. 私は彼らとともに神戸へ行く。(人称代名詞複数のsie3格)

 

3)わかりにくい場合

Ihr Kopf tut ihr weh. 彼女は頭がいたい。

この場合は2回ihrが出てきますが、Ihr Kopf彼女の頭:こちらは男性名詞1格の所有冠詞です。また、tut ihr weh彼女にとって痛い:こちらは人称代名詞3格です。

パッと見ただけではよくわかりませんが、人(3格)weh tunで〜に痛い思いをさせる、という表現を辞書で探せばわかるでしょうか。

 

結論 

なんだか覚えにくくてめんどうな人称代名詞と所有冠詞について、見分け方などを提案してみましたが、どうもあまりわかりやすくなったような気がしません。しかし、結論として言えることは、まずは人称代名詞の9種類をしっかり理解しておくこと。そして所有冠詞や、人称代名詞3、4格については、この記事にまとめたように、表を活用して同じ形になるのはどのような場合なのかを押さえておくことが必要です。また、最後にあげた例文のように、辞書の用例をよく見ておくことももちろん大切ですね。

 

 

 

 

 

 

*1:フランス語のように、三人称複数の場合は男性・女性の区別はありません

ナイキズームフライのレビュー

フルマラソンの季節になりました

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通勤に使っている香櫨園駅。夙川沿いも紅葉の季節です。

 

この週末は、神戸マラソンおよび東神戸マラソンが開催されました。また、今週の23日には、関西の人気レース、福知山マラソンがあります。これから3月くらいまで、フルマラソンを走りやすい季節なので、各地で大会が開かれます。

私は、この時期が校務や学会など、年間でいちばん忙しいので、数年前からまったく大会にエントリーしないことにしています。1月ごろまで仕事に専念して、2月から4月までに、3回くらいフルマラソンを走る予定です。

 

アディゼロジャパン以外の選択肢は?

昨年の飛騨高山ウルトラマラソン(71km)から、すごく気に入って履いているのが、アディゼロジャパンブースト3です。色違いで今年の初めにも一足買い足しています。二足とも、ウルトラマラソンやフルマラソンだけでなく、日頃の練習にも履いているので、だいぶ磨耗してしまい、アウトソールを補修して使っています。

補修剤を耗りやすい、前足部外側にたっぷりつけて修理しましたが、いまのところ特に違和感なく履いています。しかし、古い方のアディゼロジャパンは、ここ最近、アッパーの小指部分がほつれてきています。やや幅の狭いシューズなので、私の出っ張った小指とあたってしまっているようです。穴があくまで履き続けるつもりですが、ちょっと走りにくくなりそうで心配です。

アディゼロジャパンブースト3は、ウルトラマラソンを走っても足指を傷めることがほとんどないので気に入っていますが、他のシューズを買い足してもいいかなと最近思うようになりました。

 

ナイキのシューズが革新的っぽい

国内メーカー各社は、だいたい秋のフルマラソンの時期に合わせて、モデルチェンジした新作を発表します。近年は、アシックスの神戸マラソン、ミズノの大阪マラソンのように、大メーカーが協賛する大会が多いので、大会向けの記念モデルなどもあります。

しかし、アディダスは昨年に続き、この秋もモデルチェンジはなく、アディゼロジャパンシリーズやアディゼロタクミシリーズなどの新色発表のみでした。

またアディゼロジャパンでもいいのですが、せっかくなので他のメーカーもチェックしてみたところ、ナイキの新作シューズがかなり評価が高いことがわかりました。

mg.runtrip.jp

ナイキというとエアマックスのイメージで、あまりマラソン用シューズは評価されていないのではと思っていたので、ジョギングを始めて10年になるのに、まだ履いたことがありませんでした。しかし、これまで履いていた国内メーカーのシューズより、アディダスの方が足指に合うとわかったので、それならナイキでもいいのではと試してみることにしました。

ズームフライあるいはエアズームエリート9あたりがよさそうかなとあたりをつけて、ショップに行ってみました。

store.nike.com

 

神戸で試着を試みるが、別のモデルでもサイズがない

先週の土曜日に、神戸に行きいくつかのショップをのぞきました。ちょうど、神戸マラソン前日ということで、受付を済ませた参加者の方々がたくさんショップにもきていました。飛騨高山ウルトラの時も書きましたが、やはり今回も、前日からウエアを着込んで、街中を走り回っている人がいました。マラソン始まってから走ればいいのに、と思いましたが、気持ちが盛り上がっているのでしょう。

神戸のショップでは、ナイキのエアズームエリート9を試着しました。このシューズも、3時間半から4時間くらいを目指すランナー向けということで、気になっていました。日頃履いている28cmがなく、27.5cmを履いてみましたが、アッパーがやわらかく、このサイズでも履けないことはないかなという感触でした。*1

お店が混んでいたので、ズームフライの試着はあきらめ(在庫もなさそうだった)、帰宅後にネットを調べました。どうもズームフライは店頭では手に入りにくくなっているようでした。ネットにはまだ在庫があったので、せっかくだし、と注文することにしました。試着なしでちょっと心配でしたが、あっというまに商品が届きました。

 

かかとが厚い。アッパーが緩いように感じる

届いたシューズをさっそく取り出して、履いてみました。まず驚いたのは、履いた時の高さです。ジョギングシューズとしては異例の厚底のため、シューズを履くと視点がちょっとかわりました。

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このシューズのはんぺんか杏仁豆腐のような白いクッションですが、思ったよりかたくて、歩くときなど、かかとから着地すると、フニャッと沈み込むのではなく、力が前の方へ逃げて、自然と重心が前の方に移動するように感じました。つまり、かかとが厚いことで、足が前へと楽に傾いて、前へ進みやすくなるようにしてあるのだとわかりました。

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また、最近のナイキのシューズで心配していたのがアッパーの薄さと柔らかさでした。他のメーカーのシューズのように、つま先に補強は入っていないし、サイドのサポートもほとんどないように見えます。これじゃ、足指がぐにゃぐにゃ動き回ってしまうのではと心配していました。しかし、履いてシューレースをぎゅっと締めると思った以上にフィットして安定しました。

 

やたら疲れる いや違う、速く走ってるんだ。

今日は神戸大の授業がなかったので、午前中に1時間ほど走ってみました。

先ほど書いたような、特殊なソール形状のために、すいっすいっと足が前に出る感じがしました。とりあえずいつもと同じように、1km6分30秒くらいのゆっくりペースで走ろうと、すたすた走り出してみました。5分くらいすぎて、なんかやたらと疲れるように感じました。まだ1kmくらいしか走っていないのにどうしてだろう?と違和感を覚えました。しばらく同じペースで走りながら、時計を見ると、普段の練習よりずっと早いペースで走っていたことがわかりました。気づかずにスピードを出していたから、やたらとつかれたわけです。

ゆっくりゆっくりと気をつけていないと、いつもより足が速く動いてしまいます。これは明らかにこのシューズの効果でしょう。足が前に出やすくなりました。

 

足指は無事なのか?

シューズ選びでいちばん気にしているのが、足指や足裏への影響です。基本的にどのシューズを履いても、同じようなタイムでフルマラソンを走れる自信はあります。しかし、シューズでいちばん差がでるのが、足指や足裏への影響です。どうしても合わないシューズを履くと、足裏に水ぶくれができたり、爪を痛めたりしてしまいます。

ナイキズームフライは、アッパーが一枚の布でできていて、それを靴紐と連動したワイヤーで締め付けるという仕組みです。非常に単純な作りのように見えるので、ちょっと不安でしたが、思いの外しっくりきて、走っていても足指の動きは気になりませんでした。しかし、足裏や足指に影響が出てくるのは、最低でも20kmくらい走ってからなので、もう少し長い距離で練習しないと何とも言えませんね。

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家の近所を8km走りましたが、とくに不安感はなく、ちょうどよくフィットしている様子でした。

 

総評

見た目よりもずっと履きやすいシューズです。

このシューズの元になったモデルが、フルマラソン2時間切りを目指した、ズームヴェイパーフライ4%です。このシューズはさすがにかなり速いランナーが履くものなのでしょうが、今回試したズームフライは、私のように4時間前後のレベルでも、あるいはもっと初心者でも、特に問題なく履けるのではないかと思います。

*1:足のサイズは大きいけど、身長は170cmくらいです。栃木での高校時代には靴がなかなか買えなくて困りました。

Apple Watch 3 GPS版の使用感

ガーミンFenix3が故障

先日の六甲5ピークス(台風で中止)にむけて、シューズやバックパックとともに、スポーツウォッチの準備もしていました。この大会は、私がエントリーしたロングコースは32キロ。距離だけだと大したことありませんが、六甲山や摩耶山などを上り下りして32キロなので、おそらくゴールまで6〜7時間かかると予想していました。そこでバッテリー持ちのいい、ガーミンFenix3(日本語非対応版)を使うつもりでしたが、直前のトレーニング後に、なぜか電源が落ちたままそれっきりになってしまいました。

 

発売から2年以上たっていますが、いまだにいいお値段です。

ガーミン使用者の方が見つけた対処法や、ガーミンにメールで相談して教えてもらった復帰方法を試して見ても、うんともすんとも言わず、今の所そのまま放置してあります。しばらくは、2年前まで使っていたスントのAmbit2を使うつもりでいましたが、せっかくだし、とふだん使いにもよさそうな、Apple Watchを試してみようと思い、11月に入ってすぐに購入しました。

 

単体で電話がかけられる時計?いいえ、無理です。

この秋に出た、Apple Watch3の最大の目玉は、単体で電話をかけたりうけたり、メールを送ったりできる機能です。つまり、腕時計にSIMカードが入っていて、それ自体が電話として使えるわけです。しかし、今のところドコモ、auソフトバンクの大手3キャリアにしか対応していません。我が家では、iPad2台とiPhone2台にIIJ格安SIMを入れていて、月額合計5000円程度で済んでいます。単体で通話できるというのも面白そうだったのですが、無ければないで困らない機能なので、今回はLTE無しのGPSモデルを選びました。

www.apple.com

私が選んだのは、上のナイキプラス、ケースが42mmのモデルです。Apple純正版とはベルトが違うほか、中にあらかじめナイキ+の文字盤やアプリがインストールされているようです。

スポーツウォッチとして使うことが主な目的だったのでこれがちょうどいいと思いました。

 

iPhoneの子機として、通話はできます

Apple WatchGPS版は、単体では通話できませんが、iPhoneBluetooth接続できている場所にあれば、電話を受けることができます。その際手元から音が出ますが、Bluetooth接続したイヤホンに音を飛ばすこともできます。

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実験として117で時報を聞いてみました。

大きさと機能、電池持ちなど

ケースの42mmという大きさは、人によっては大きくて邪魔だと感じるらしいのですが、ガーミンやスントのような存在感のあるスポーツウォッチになれていた私には、わりと小さめかなと思いました。バッテリー持ちを良くするために、もう少し大きく作っても良かったんじゃないかとすら思います。

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自宅なのでジャージ着てます。


はじめに、Apple WatchiPhoneと同期させます。iPhoneApple WatchBluetooth接続されるので、ちょうど親機と子機のような関係になります。

同期をすませると、iPhoneに入っているメールやミュージック、写真などはもちろん、LINEや乗り換え案内など自分でインストールしているアプリも、Apple Watchに対応していれば、勝手にウォッチのほうにインストールされます。

Dudenのドイツ語辞典やルフトハンザ、Deutsche Bahnのアプリなども入っていますが、これらがどのように使えるのかまだよくわかっていません。

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りゅうず状のボタン(デジタルクラウン)を押し込むとアプリが一覧表示されます。左上に、DBとルフトハンザのAppが見えます。

Apple Watchの設定は、iPhoneのWatchアプリから行います。どのアプリの通知をどのようにするかなど、細かく設定することができます。また、文字盤の種類を選んだり、文字盤に何を表示するかを選ぶこともできます。

文字盤の表示を変えたり、ダウンロードした文字盤を使ったりといったことは、スマートウォッチとしての機能を持つスントやガーミンにも備わっていましたが、やはりかなり使いにくくて、Apple Watchのように直感的な操作はできませんでした。

文字盤はふだん腕に装着しているときは消えていますが、腕を顔の方に傾けたり、水平になるように動かしたりすると、画面に表示されます。

私が普段使っているのはおもに、上の写真に写っているNike+のアナログ文字盤と、クラゲの文字盤↓です。クラゲの文字盤は、画面上をタップすると違う種類のクラゲが出てきて、数秒ほわーんと動くのでおもしろいです。授業中、学生が作業をしていて暇なときなどに、ぼやーっと眺めたりしています。

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画面下には、心拍数が表示されています。心拍計がついているというのもスポーツウォッチとして便利そうだと思ったポイントでした。

心配していたのが、バッテリーの持続時間です。使用レポートなどから、すでに、フルマラソン(GPSやストップウォッチ使用時)には十分足りる(5時間は持つらしいです)けど、ウルトラマラソンは無理とわかっていました。しかし、日常生活を送る分には、2日〜3日くらいは持ちそうです。充電器はiPhoneなどとことなり、磁石がくっついている充電台に載せるだけですみます。寝る前にこの台の上に載せるようにしています。充電台に乗っかった状態です。ライトニングケーブルとほぼ同じケーブルです。

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スポーツウォッチとしての使用感

買って一番良かったと思ったのは、やはりスポーツウォッチとしての使い勝手の良さでした。

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これまでスント、ガーミン、それからナイキと3種類のスポーツウォッチを使用してきました。使用感のポイントは、時計としての表示の見やすさだけではありません。

1)GPSの感度

2)画面表示の変更可能性、見易さ

3)心拍数・高度などの計測、正確さ

4)データ管理のしやすさ

ガーミンやスントもそれなりにいいのですが、とくに1)のGPSと4)データ管理の面で、Apple Watchが他を圧倒していると思いました。

ジョギングをする上で重要なのは、走行距離と位置を正確に記録することです。日頃のトレーニングであれば、データを蓄積することができるし、マラソン大会では、手元で今現在の距離やペースがわかることは非常に重要です。しかしこれまでつかっていたGPSウォッチは、なかなか信号をキャッチできず、家を出て1、2km走った後になってようやく距離の計測が始まるなんてこともよくありました。

また、走行距離や時間、場所だけでなく、使用したシューズの種類などさまざまなデータをまとめて管理できるのは、やはりスマートフォンと連動したApple Watchの強みです。いろいろなスポーツ系アプリがありますが、私が使っているのはNIKE+RunClubです。走った場所の地図、ペース、高度、使用したシューズなどのデータを保存でき、非常に見やすく便利です。

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練習コースとペースを確認することもできます。

また、1日のスポーツだけでなく全体的な活動量を記録するアクティビティというアプリもあります。こちらは、1日の目標達成をリングで表示します。割とよく動いている日だと、特に意識しないでもリングは完成できるのですが、あまり動いていないなあという日はこのアプリを見て、意識的に動くようになりました。おかげで、11月4日以降ほとんど連日目標を達成できています。

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NIKE+RunClubを使ってランニングをすると、自動的にアクティビティに記録されますが、プールなど腕時計を外さなければいけない場面では、SwimWatch+というアプリで、事後にデータを入力し、その日の運動量に合算することができます。 

メール等の通知、メッセンジャーへの音声での返信

Apple Watchに期待していたもう一つの機能が、通知でした。日頃移動中などはほとんどカバンにiPhoneをしまったままということが多いので、妻や職場からのメールをすぐ見られないということがよくありました。研究室にいても、iPhoneへの着信に気づかないことが多いので、メールやメッセンジャー、LINEや電話などの着信をその場で受けられるというのは非常に便利です。iPhoneがロック状態になっていれば、あらゆる通知がすべてApple Watchに送られてきます。もちろん通知の仕方はカスタマイズ可能なので、必要ない情報を間引くこともできます。

各種の通知については、音と「触覚」で知らせてくれます。触覚というのは、最近のMaciPhoneに装備されている、物理的に動かないけどクリック感が伝わる、あの感じです。メールやメッセージの着信があると、音がすると同時に、ピシっと小さな感触が伝わります。

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また、妻からのメッセンジャーでの連絡に、即座に音声で返信したりといった使い方もしています。まだまだSiriをつかった音声入力にはなれていませんが、Apple Watchの一番の長所は、音声でアプリを動かせる点だという人もいるので、今後もっと活用していきたいところです。

 

電車に乗るのもApple Watch

今年の夏から、iPhone7を使っていますが、電子マネーによる支払いなどにはまったく関心がなかったのでこれまでクレジットカードを登録していませんでした。運動不足解消のために、先月から電車通勤を再開しています。(家から駅、駅から大学までがそれぞれ徒歩で10分以上かかるので、一往復でけっこうな運動になります)

あるとき、iPhoneで電車に乗れるよなと思い、調べてみるとSuicaのアプリをインストールして、そこに課金すればいいということがわかりました。関東圏の人にとっては、スマホで電車に乗るのはあたりまえかもしれませんが、関西のICOCAApple Payに対応していないのです。

news.cardmics.com

今後も対応する予定はないそうなので、アプリ経由でSuicaを発行し、そこに登録したクレジットカードから、お金を入れるという形になります。これで、iPhoneをつかって電車に乗れるようになり、非常に便利だと思いました。

Apple Watchでも、同じようにSuicaを使えます。iPhoneSuicaアプリからデータを移せば、Apple Watchを改札にかざして電車に乗ることができます。腕時計は左手首に巻くので、駅の自動改札とは方向が逆でちょっと使いにくいのですが、やはり手軽です。残高についても、画面ですぐ確認できるし、課金もできます。

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クレジットカードも同時に登録されているので、それを使ってコンビニや自販機での支払いも可能です。

 

すごく便利なロック解除機能

地味ですが、実はものすごく便利なのが、Apple Watchを装着して、スリープ状態のMacに触れる(キーボードやトラックパッドをクリックする)とすぐにロックが解除できるという機能です。

通常、パスワードを登録している場合は、スリープから立ち上げる時に、いちいち入力しないといけません。これがちょっとわずらわしいこともありますね。Apple Watchを腕に巻いていれば、Macのキーボードで何か押すだけで、カシャっと効果音がなってすぐにロック解除になります。

 

ついでにAirPodsも使ってみた

iPhoneApple Watchとセットで使うと便利なのが、AirPodsです。iPhone7以降は、イヤホン端子がなくなってしまったので、有線イヤホンを使う場合は、ライトニングケーブルの穴にアダプタをつけてイヤホンを刺さないといけません。これがけっこうじゃまくさいので、思い切ってBluetoothでつながるAirPodsを買ってみました。

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しまっておくだけで充電できるケースも非常に便利です。

アップル製のイヤホンは耳にあわないというか、脱落する心配があったのでこれまで避けてきましたが、ケーブルに引っ張られないAirPodsなら大丈夫かもしれないと思ったので今回あえて選びました。

こちらもApple Watch同様、あっというまにiPhoneとペアリングができます。4年くらい前に使っていたオーディオテクニカのイヤホンもBluetooth接続でしたが、もっとずっとめんどくさかったのを覚えています。

音質には期待していなかったのですが、耳にぐいぐい押し込むようにして、いい場所にはまっていれば、非常にきれいな音が聞こえます。*1ちょっと高かったので、躊躇しましたが、いい買い物だったと思います。

 

MaciPadと連動させて使うことも

以上、かなり長くなってしまいましたが、Apple Watchを使い始めて10日ほどのレポートでした。いろんな機能がおもしろいので、あれこれ書きすぎてしまった感があります。さらに、MaciPadのアプリと連動させて使うこともできるそうです。(Keynoteのスライドを動かしたり)このへんの機能はまだためしていないので、今後いろいろ試みてみようと思います。

 

*1:ふつうの開放型イヤホンのように、耳の穴に浅く引っ掛けるのではなく、カナル型イヤホンのように耳の穴にぐっとつっこむといい位置に入ります。耳を動かしたり、顔の向きを変えたりすると位置がずれるので、時々直す必要があります。

小作文を取り入れた授業

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ブログ更新をサボっている間に

前回の記事から三週間くらい更新が滞っていましたが、この間に2回台風が来て、1日授業が休講になり、トレイルランニングの大会が中止になって、分担者として三件の科研費申請を行い(ほとんど手出ししてませんが)、学園祭で6日間ほど休日が続き、そして10月後半から断続的にいそがしく教務関係の仕事をこなしています。

ブログの更新は止まっていましたが、未発表の下書き原稿は5本以上あるので、これから少しずつ完成させていきます。

昨年から授業に小作文を取り入れる

今回は、昨年度から行なっていた、ドイツ語の授業で、授業時間の終わりに作文の課題を出していることについて書きます。もしかしたら、どの先生方も当たり前にやっていることかもしれませんが、私にとってはこれを取り入れたおかげで、わりと漫然と行き当たりばったりに教科書を進めていた授業に、明確な形が見えてきた気がしています。

 

宿題は出さず、授業内の活動に集中

2010年からドイツ語を教えてきましたが、考えてみるとこれまでほとんど宿題を出すことはありませんでした。というのも、宿題など出すと、教えている自分がどのクラスで何を宿題にしたか覚えていなければならないのが面倒だったからです。初めに教えていた京大では、学生がみんなよくできるので、宿題など下手に出してしまうと、教科書があっという間に終わってしまって、もっと高度なことを教えなければならなくなるという不安がありました。初めのうちは宿題もだしていましたが、気づくと学生たちはみな授業前の休み時間5分ほどで宿題をやってしまうので、それなら授業時間内に、問題練習などすべてやってしまうのがいいだろうと考えるようになりました。*1

その後いくつかの大学で教えてきましたが、基本的な進め方は同じです。授業時間中に、教科書のペアワークや会話文をつかったグループ練習をやり、その合間にそれぞれが教科書の練習問題などを解く時間をとっています。私はあまり文法事項をあれこれ説明しない(一度に説明すると分からなくなる恐れがあるので)ので、どの大学でもこの方法でちょうどいいペースをつくれています。

 

全く勉強しない学生をどうするか

しかしこの方法だと、授業時間以外に多くの学生は全く勉強をしなくなってしまいます。なんとか中間テストや、期末テスト前の口述試験(作文とプレゼン)などを取り入れ、試験期間の詰め込み以外にも家庭学習の機会を作るようにはしているのですが、それでも15週のうち13週くらいほとんど何もせずに過ごしている学生もいます。

多くの学生が自律的に参加できるような授業内の活動をつくろうと、これまではグループワークを行ってきました。しかし、グループワークについてよく言われる批判ですが、フリーライダー(何もせずに成果を得る者)の発生は避けられません。そうなると、必然的に学生一人一人が自力で取り組むような課題を毎回何かだすのがいいのかな、と思うようになってきました。

  

クラスサイズの変化 いまや少人数クラスが基本となっている

もう一つ、授業の進め方を考え直すきっかけになったのが、各クラスの履修者数の変化でした。

専任教員になって4年目ですが、毎年ドイツ語履修者は少しずつ減り、今年度は本務校で一番大きいクラスでも22名、小さいクラスは6名程度になっています。非常勤として京大で教え始めた頃は、1クラス40名以上がふつうでしたし、本務校でも初めの年はどのクラスも30名程度はいました。しかし、これだけ人数が減っている今となっては、むしろ授業の方法を変えて、より少人数むけのやり方を考えないといけなくなってきました。

これまで、個人で取り組む課題よりは、グループワークを優先してきたのは、何より大人数クラスでも採点が容易だったからでした。

毎回作文の課題を出すという方法は、大クラスだと採点がたいへんなので向いていませんが、少人数クラスだと、それぞれの学生の学力だけでなく、勉強の仕方や、苦手な分野、思考の癖などがよくわかってきます。

 

毎回どんな課題を出しているのか?

昨年度、近大の2年生クラスで、小作文を取り入れ始めました。法学部と経営学部で1つずつ2年生クラスを教えていますが、昨年の経営学部クラスは、50人も履修者がいました。既習者でわりと真面目な学生が多いクラスなので、人数の多さはあまり気になりませんでしたが、一人ひとりに目が届いていない感じがして、いつも不安でした。

そこで、教科書の練習問題の解答解説をして、授業時間の終わりには、教科書の問題をちょっと変えた作文問題を作って出題するようにしました。この課題を出すことで、それまで寝ぼけていた学生も、いやでも授業に参加するようになりますし、なんとなくついていってるつもりの学生たちも、改めて自分がちゃんと理解できているかを確認することができるようになります。

課題は、学生が10分〜15分程度で解答できる、そして何より私が苦痛を覚えずに採点できるような問題数とレベルに設定しています。

教科書でその回に出て来た内容を組み合わせればだいたいできるような作文を2つか3つほどホワイトボードに書き、解答用紙に(B6サイズ)に記入させ、できた順に提出して退出可としています。

 

たとえば、二年生クラスでは最近形容詞の格変化をやったところなので、

1)私は私の赤い車で神戸へ行く。

2)彼女は母親に、その新しい本を買う。

3)日曜日に、彼らはイタリアンレストランに食事に行く。

といった問題にドイツ語で解答させます。

ポイントは、1)は私の赤い車mein rotes Autoを前置詞mitの後ろにくるので3格mit meinem roten Autoとするところです。2)は、「その新しい本」が中性名詞で4格なので、das neue Buchとします。3)は、形容詞イタリアンitalienischが、前置詞insのあとにつくので、4格ins italienische Restaurantとなる点です。教科書に載っている形容詞の格変化3種類のパターンと、先月の授業で説明した前置詞の格支配のところを見直せば、それほど難しくない内容です。

もちろんテストではなく、授業内の活動なので、教科書や辞書を使ったり、友達同士で相談するのも自由です。ただ、全く自分で考えずに、友達の答えを写すということはしないように呼びかけています。

 

小作文の効用

小作文を取り入れることの効用については、すでにいくつか述べてきました。最後にいくつかのポイントに分けてまとめます。

1)学生が作文問題を解くことで、ドイツ語の学習に意識的になる

授業を通じて何を教えるかは、大学学部ごとにことなっています。私たちの大学では、週1コマで、専門の勉強に特にドイツ語は必要ないので、ほとんどの学生は2年生まででドイツ語の学習はおわりとなります。ですから、ドイツ語を読める、話せるということよりも、書くことを通じて、ドイツ語のしくみを理解してもらいたいと思っています。小作文の問題を解くことは、教科書で学んだ知識を自分で運用することです。この作業を通じて、ドイツ語でどのように文章が作れるのかということを学んでもらえればと思っています。

2)全員が必ず参加できる

何を持って授業への参加とするのかは、先生方それぞれにご意見があるかと思います。それまで私は、ただ座ってるだけでも別に構わないと思っていましたが、自主的に勉強に向かえない学生を何人か見ているうち、授業時間内に半強制的に手を動かす時間をとったほうがいいと思うようになりました。この方法をとりいれたことで、みんなが真面目に学習するようになったということはありません。しかし、数人の学生は、自分がちゃんとわかっていないということを素直に受け入れ、どうすればわかるようになるのか考えるように変わってきました。例年ならテスト二週間前ごろになってあたふたしてくる学生たちが多かったのですが、昨年度あたりから、もっと事前に分からないポイントを質問したりする学生が増えてきました。

3)学生一人ひとりの理解度や得意不得意を見極め、対応することができる

10人程度のクラスで授業をしていると、普段の授業だけでもそれぞれの学力はわかります。作文を取り入れることで、それぞれの学生の苦手としている部分、たとえば動詞の人称変化がわかっていない、定冠詞と不定冠詞の区別が苦手、格変化が理解できない、あるいは英語の語順になってしまうなど、個々の学生の考え方の癖や勉強の仕方も見えてきます。そういった不得意分野については、日頃授業から注意しておしえるようになりました。

4)教科書の進度にとらわれない、自由な問題づくり

出題する内容は、毎回の授業の内容だけにとらわれないよう、多くの学生が苦手とする分野については、何回も繰り返し出題することで知識の定着を図っています。文法の教科書では、どうしても一つの課が終わり、つぎの課に進むと、前の学習内容は忘れられてしまいがちです。しかし教える立場から重要なことや理解して欲しいことは、すでにおわった課の内容でも、なんども問題にだし、授業でもリマインドすることができます。

5)中間テスト・期末テストの問題づくりが簡単に

これは私にとってのメリットですが、普段から作文の問題をあれこれ作るようになったので、中間・期末テストで新たな問題を作ることが容易になりました。学生へのサービスとして、すでに出題した問題を出すこともありますが、既習の知識を組みわせレバできるような新しい問題も出しています。また、特定の動詞や前置詞を使って自由に作文せよ、というような問題も出すなど、出題のバリエーションが広がりました。

*1:例外的に毎回宿題を課していたのが、京大で1年だけ担当した2回生以上の講読の授業でした。フロイトカフカを扱っていたので、予習してくること前提で、毎週2ページくらいのペースで進めていました。

2格と所有冠詞と「の」

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多くの学習者がつまづきやすいポイント

ドイツ語教員として仕事をし、ドイツ語を教えながら気づいたことを書くことが目的のこのブログですが、これまでは、ドイツ語の学び方や文法の仕組みについての記事を書くことはありませんでした。

私自身は文学と思想史が専門なので、ドイツ語学についてはごくわずかな知識しかありません。留学経験もないので、現地の人はこんな言い方をする、という知識も正直全く自信がありません。それで、ブログではなるべくドイツ語文法について発言することは避けるようにしていました。

しかし、日頃ドイツ語を教えていると、私の専門がなんであれ、ドイツ語をどう理解するか、学生たちが、どのように日本語の世界(学習者が持っている知識)に置くことができるかということを考えないわけにはいきません。

今日は、多くの学生が混乱するポイントである、ドイツ語の2格と所有冠詞について、自分なりに理解していること、学生たちに説明していることを少しまとめてみようと思います。

 

ドイツ語の格とは?

日本語の場合、たとえば

私は彼に手紙を書く

という文を、「彼は私に手紙を書く」と書き換えても、「私」や「彼」といった名詞自体の形は変わりません。

しかし、英語やドイツ語の場合

I write him a letter.  He write me a letter.(英)

Ich schreibe ihm einen Brief. Er schreibt mir einen Brief.(ドイツ語)

のように、私や彼にあたる、I, ichが「私に」のときはme, mirと語の形が変わっているのがわかります。日本語の場合、どちらの場合でも、「私」や「彼」という名詞はそのままです。文の中に、「は」や「が」のような助詞があるため、それぞれの名詞が文中でどんな役割なのかわかるようになっているわけです。

ドイツ語の場合、日本語の助詞にあたるのが、「格」の概念です。1格から4格まで4種類の格があります。日本語では、名詞の後ろに助詞をつけましたが、ドイツ語の場合は、名詞や代名詞自体が変化したり、名詞の前の冠詞が変化することで、助詞と同じような役割を果たすことができます。名詞や冠詞が、4つの格に応じて変化することを格変化といいます。

まずは1格から4格まで、文中でどのように使われるのか、事例を挙げてみます。

1格(主語になる):Das Auto ist groß.  その車は大きい。

2格(所有を表す):Das Auto des Vaters ist klein. 父の車はちいさい。

3格(間接目的語〜に):Ich kaufe der Mutter eine Blume. 私は母に、花を一輪買う。

4格(直接目的語〜を):Ich besuche den Vater. 私は父を訪問する。

以上の文で、下線部が、それぞれ1格から4格の名詞です。日本語だと、1格(は)2格(の)3格(に)4格(を)のように、ちょうど助詞とほぼ対応しています。もちろん別の言語なので、100パーセント一致するわけではないのですが、とりあえずそのようなイメージで理解しておくといい、ということです。

上の例文にもでてきている、derやdasというのは、定冠詞です。ドイツ語の名詞には、男性・中性・女性という三つの性、そして複数形があり、それぞれ別の定冠詞がくっつき、格変化します。いわゆる、であですでむでんですね。

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Tischテーブルが男性名詞、Tascheかばんが女性名詞、Buch本が中性、Kinder子供たちが複数形です。それぞれ違う定冠詞がついていることがわかります。

 

もうひとつの(〜の):所有冠詞

さきほど挙げた例文では、名詞の前に冠詞(das とかden)をつけていましたが、「私の車」や、「私のお父さん」というときには、mein Auto, mein Vaterといいます。このmeinを所有冠詞(所有代名詞とする教材もあります)といいます。要は英語のmy, your, hisなどのようなものです。

所有冠詞は、英語と同様、人称代名詞ごとに違った形になります。つまり、私のmein,君のdein、彼のsein、彼女のihr、それのsein、私たちのunser、君たちのeuer、彼らのihr、あなた・あなたたちのIhrとなっています。

そしてもちろん、これらの所有冠詞は名詞の前について、定冠詞と同じように格変化することになります。

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和文独訳のさいに、わけがわからなくなる

さて、これまでの内容を踏まえて、学生が間違えやすいポイントを指摘していきます。

たとえば、「私は私の父に、手紙を送る」という文章を書いてみます。

Ich schicke meinem Vater einen Brief. 

このときの「私の父」とは何格でしょうか。日本語からドイツ語文を書こうとするとき、多くの学生がとまどってしまいます。答えを見れば、「父に、手紙を送る」ということですから、誰か(3格)に、何か(4格)を送るという意味の動詞schickenを使って、父を3格meinem Vaterにすればいいということはわかります。しかし、「私の」なのだから、2格ではないのか?と考える学生もいます。

要は日本語文の「の」に引きずられてしまっているのです。

別の例を見てみましょう。

彼女は彼女の友人たちと、映画に行きます。

Sie geht mit ihren Freundinnen ins Kino.

これも学生たちは頭を抱えます。「友人たちと」をどうするか?「と」って何格なのか、「彼女の」だから2格でいいのか?と考え込んでしまうのです。「〜と」なら前置詞のmitで、mitのうしろは常に3格になることがわかっていれば、mit ihren Freundinnenと、彼女のihrに複数3格の語尾(en)をつければいいことがわかります。

ここまでの例は二つとも2格ではありませんでした。では、2格を使う場合も見てみましょう。

私の祖父の車は高い」

Das Auto meines Großvaters ist teuer.

私の祖父は、mein Großvaterです。その車ということですから、das Autoの後ろに2格meines Großvatersをくっつければいいと考えましょう。この文が理解できれば、次の文を作るのは簡単です。

「私の父は、私の祖父の車を私にくれる」

Mein Vater gibt mir das Auto meines Großvaters

この場合も、「私の祖父の車」と「の」がたくさん入っていてパッと見ると混乱しますが、車を父がくれるので、車=4格で、「私の祖父」を2格として、Das Autoの後ろにくっつければいいわけです。

 

の=2格だけでは混乱してしまう

ここまでいくつかの例文を挙げて確認してきましたが、多くの学生は「は=1格、の=2格、に=3格、を=4格」という図式で格の概念を理解するため、「の」が出てくると、反射的に2格だ、と考えてしまいがちなのだということがわかりました。日本語の「の」にふりまわされてしまって、ドイツ語文において、「の」がくっついている名詞自体が、文中でどのような役割になるのかという点に気がつかないことが原因なのだと考えられます。

格や所有冠詞の使い方というのは、私たち教員にとっては、ごく当たり前の知識だし、教科書を見れば変化表とともに例文が出ているので、簡単に理解できるように見えます。

しかしドイツ語を学び始めた学生たちとしては、教科書に書いてある知識を、自分が知っている日本語に、どうやって結びつけていくか、という作業を毎回必死で行わないといけないわけです。そのさいに、どうしても概念を単純化して無理やり理解するということは起こるし、日本語で理解することによる混同・混乱というのも、起こりやすくなってしまうのでしょう。

 

どうやったら理解できるようになるのか?

もちろん私が授業をしながら気づくことというのは、他の先生方もみなわかっていることだろうと思います。だから、文法書には詳しい解説が書いてあるし、難しめの教科書をひらけば、教員が何も言わなくていいくらい例文がぎっしり挙げられていたりします。授業の時にも、初めて出てきた文法事項については、しっかり理解できるようにたくさん例文を板書したりして、説明するのがいいのかもしれません。

しかし、私としては、こういうつまづきや混同をしてしまうことこそが、理解への一歩だと思っています。最近は、本務校でも非常勤先でも、授業の終わりに2、3問程度の作文の問題を出しています。学生たちは習った知識を使って、教科書・辞書をみて、仲間同士で相談してドイツ語文を書き、書けた人から授業終了としています。この作文の時間に、自分だけ理解できていない、取り残されているのでは、と不安になって質問に来る学生もいます。そんな学生たちの質問に答えながら、そのわからなさやつまづきこそが大切なんだと言い聞かせています。結局のところ、学生自身が、自分の分からなさに向き合って、じっくり考える中で理解していく他ないのだろうと思います。その過程で、ドイツ語と英語や日本語との違いや、そもそも日本語の「の」って何なのかといった疑問にぶつかり、自分がこれまで生きてきた言語の世界を見直すきっかけになれば、それこそ外国語学習の意義というべきでしょう。

 

独文学会でのこれまでの発表を振り返る

あの頃は何をしていたのだろう?

思えば昨年も、この時期に過去の自分の研究活動を振り返っていました。

 

schlossbaerental.hatenablog.com

去年書いた記事では、最近学会で会う若手研究者がみんな偉くみえるので、自分が30歳ごろ何をしていたのか、という振り返りをしました。

最近なんとなく思い出していたのは、これまでの日本独文学会で、いつどんな発表をしていたのか、それぞれの発表の時に、どんなことを考えていたのか、ということです。

 

初めての学会発表

私がはじめて学外で研究発表をしたのは、2004年秋の博士課程1年目の頃です。このときは、京都外国語大学での日本独文学会京都支部でした。修士論文で取り上げた、シュレーバー回想録において、どうして光線が神の言葉を伝える媒体であるという妄想が生まれて来たのかというテーマについて話しました。

初めての学会発表ということで、普段学会に寄り付かない指導教員が見にきてくれました。発表後の質疑応答はあまり盛り上がりませんでしたし、懇親会も年配の先生ばかりで話し相手がいなくて、教科書会社の方とばかり話していたのを覚えています。*1

 

2005年春以降の全国学会での発表を年表でふりかえる

以下、それぞれの発表での思い出なども含めて並べていきます。 

2005年(D2)春季研究発表会、早稲田大学、口頭発表(←原則的に単独です)。京大の友人たちがしきりに発表していたので、遅れてはならないと全国学会に出ることにしました。このときは、シュレーバー回想録における宇宙=死後の世界という発想が、心霊主義と進化論が入り混じったカール・デュ・プレルの哲学に由来しているという話をしました。指導教員が来てくれたほか、その後共同研究をする方々ともここで知り合いました。

 

2005年(D2)秋季研究発表会、同志社大学、口頭発表。この回では、さらにデュ・プレルを中心に、その哲学的心霊主義がどのようにシュレーバーへと影響していたかをまとめようとしましたが、デュ・プレルの本をぜんぜん読みきれていなくて、失敗しました。同じく発表を失敗した後輩と、今出川通の天下一品でラーメンを食べて帰りました。

 

2006年(D3)春季研究発表会、学習院大学、ポスター発表。京大人間・環境学研究科で毎年行われる、「人環フォーラム」で19世紀末ドイツにおける身体観について発表し、それを発展させて、体操から舞踊へとつづくドイツの身体文化におけるリズム概念についてポスターで発表しました。

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前日の晩に必死でポスターを作っていました。当時は髪を伸ばしていました。

このテーマは、シュレーバー研究から少し離れるので博論には含めていないのですが、その後現在に至るまで、授業のネタにも取り上げている、お気に入りの話題です。ポスター発表にも関わらず大きい教室一つを貸してもらえたので、たくさんの人を相手に話すことができました。本や論文でしかしらなかった憧れの先生方と知り合えたことも大きな収穫でした。この回にも、Mハタ先生は来てくださっていました。本当にありがたいことでした。

発表の後は、懇親会で飲みすぎ、栃木の実家に泊まる予定だったのに、電車を乗り過ごしてJR宇都宮駅までいってしまいました。車で迎えに来てくれた家族には迷惑をかけてしまいました。*2

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JR宇都宮駅東口の餃子像まえに1時ごろに着きました。この餃子像はその後崩壊し、修復された後に別の場所に置かれているようです。

2007年(D4)秋季研究発表会、大阪市立大学、ポスター発表(団体)。前年に行った発表のさいに知り合った先生方と3人共同で、19世紀後半のドイツにおける庭づくりと身体文化の関係について共同発表をしました。朝10時開始だったので、9時頃集合だったのですが、京都からだと大阪市立大学が思いの外遠くて、6時台の電車で出町柳からいきました。私の発表は消化不良でしたが、3人で集まって準備をする過程が非常に楽しくて勉強になりました。

いまでこそ、ポスター発表といえば、A0などの大きな紙に、PCで作ったデータを印刷するのが一般的です。しかし当時の私は、生協で売ってる模造紙に、レーザープリンタで印刷した写真とキャプションを、糊で貼り付けてポスターを作っていました。プリンタで印刷した最近のポスターは、たしかに美しいのですが、反面遠くから見るには字も写真も小さすぎます。見やすさを考えると、私がやっていたような手作りポスターの方がいいのではないかと思います。

 

2009年(精華大学助手)秋季研究発表会、名古屋市立大学、シンポジウム(4人)。大阪市大のポスター発表の後、他の先生方と話し合って、世紀転換期ドイツにおける神秘主義的思考についてのシンポジウムを行うことになりました。私はシュレーバーに影響を与えたデュ・プレルについて話しました。この年から京都精華大で3年任期の助手になり、忙しくてなかなか準備が進められませんでした。シンポジウム当日はわりと盛況でしたが、その後は論文にまとめるのに時間がかかりました。このときは、発表が1日目ということで、懇親会、二次会、三次会とかなり飲んでしまい、ホテルにどうやって帰って来たかほとんど記憶がありません。

 

2012年(専業非常勤1年目)秋季研究発表会、中央大学、シンポジウム(5人)。ドイツ現代文学ゼミナールで、数年にわたり学会シンポジウムを行うことになり、私もドイツの現代小説についての回で発表することになりました。2010年頃にはメンバーと担当する作家・作品は決まっていました。私は旧東ドイツに関心があるということで、2008年に出たウーヴェ・テルカンプの大長編『塔』を読むことになりました。その後数回準備会がありましたが、実は私が『塔』を最後まで読み終えたのは、シンポジウム発表の申し込みが済み、予稿集の原稿も書き上げた後の、12年の夏休みのことでした。今もそうですが、当時の私にはそれだけ長編小説を読むのはたいへんでした。その後2013年春に、小説の舞台となったドレスデンに行き、帰国後に論文を書き上げました。

学会発表は土曜日の午前中からだったため、前日に京大で5時限目の授業を終えた後に京都を出て、夜中近くに橋本のホテルに泊まりました。当日は専業非常勤だったので、授業は1日も休めませんでした(京大は回数分給料がもらえるため、休講にするとそのぶん給料が減ります)。

テルカンプの『塔』は非常に面白い作品なので、もう少し読み込んで別の視点から論じたいのですが、なかなか手がつけられません。

 

2013年(専業非常勤2年目)春季研究発表会、東京外国語大学、ブース発表(5人)。以前からつきあいのある東北の先生方と組んで、アプリケーションと連動したドイツ語学習教材づくりを進めてきました。私自身は参加しているといっても、ほんとに末席に座ってただけのようなものですが、学会では共同でまとめたスライドを使って発表し、ソフトウェアのデモなどを行いました。この回が初めてのブース発表でしたが、語学教育などの場合には、発表者と来聴者が話し合いやすい形式だと思いました。

 

2014年(講師1年目)秋季研究発表会、京都府立大学、ブース発表(単独)。2013年には、上記のアプリを使ったドイツ語教授法の一環として、iPhoneiPadのアプリやカメラを生かしたアクティブ・ラーニング的なドイツ語教授法を各大学で実践していました。3つの大学でグループワークを行なった結果と学生の作品などを見せました。

この発表のあと、私はむしろあまりICTやアプリを使わない方向へ舵を切ります。もっと原始的な方法でも、アクティブな授業はできるのでは、と模索しながら、教授法の研究も続けています。

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2016年(講師3年目)秋季研究発表会、関西大学、シンポジウム(5人)。2015年頃、気の合う仲間同士で発表がしたいと友人に持ちかけられ、16年春ごろにメンバーを確定、初夏にようやくテーマを決めるというタイトなスケジュールでしたが、非常におもしろいシンポジウムができました。発表の成果については、つい先ごろ論文集としてまとめることができました。(叢書Nr. 128です↓)

www.jgg.jp

この研究チームでは、短い期間ながら、何度も会合を重ねて意見交換をして来ました。毎回会うたびにほっとした気持ちになって、またこれからも頑張ろうと思えたのは、すばらしい仲間がいっしょだったからでした。このチームでは、今後も共同研究を続けていこうと考えています。目標としては、もう一度シンポジウムをやって、その後本を出せたらと思っています。

 

2017年(講師4年目)秋季研究発表会、広島大学、ブース発表(単独)。14年から実施してきた国際化と異文化理解について発表しました。先日の記事にまとめた通りです。

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忙しくて観光などはまったくできませんでしたが、このとき私ははじめて広島県に泊まりました。通過するだけなら何度も来ていたのですが、広島を目的地とした旅は意外にも初めてでした。

 

年表にまとめて見えてくるもの

年表形式で書き出して見ると、博士課程2年以降はほぼ毎年のように発表していたことがわかります。2009年以後少し間が空きましたが、このころは博士論文の完成をめざして、学会発表や別のテーマでの論文投稿などを控えていたのでしょう。

大学院時代に指導教員からは、あまり学会にばかりこだわるのはよくないとときどき言われていました。おそらく先生としては、学会の小さな世界での名声を求めることより、学問としての完成度を高めてもらいたいという思いがあったのでしょう。それでも当時は、自分たちは京都みたいな田舎にいるし、学際系研究科で就職も不利なんだから、他の大学の人よりがんばらなければ、と必死でした。

院生の頃の発表テーマをふりかえると、一見博士論文へとまっすぐに進まず、わき見ばかりしているように思えます。それでも当時興味を持って調べたこと、発表に向けて集めた資料などは、現在の自分にとって非常に役に立っています。

最近の自分を振り返ると、院生・OD時代よりも予算が潤沢になったので、あれこれ本を買い集めたり、現地に資料収集に行ったりできるようになっています。しかし一方で、なかなか腰を落ち着けて研究に取り組めていません。10年以上前からの研究発表を思い出し、自分が一体何に関心をもっていたのかを振り返りながら、これから何をすべきかを考えていきたいと思います。

*1:これは、今の若手にはわからないことでしょうが、当時の京都支部は、懇親会に院生やODが参加することなどありませんでした。私が博士課程を出た頃から、だんだん若返りが進んだように思います。

*2:写真は当時書いていたミクシィの日記に残っていました

日本独文学会でドイツ文学講義について発表しました

独文学会で発表しました

9月30日から10月1日まで広島大学で行われた日本独文学会に参加してきました。

今回は、「語学教育の方法を生かしたドイツ文学講義の試み—教養科目でどのように文学を取り上げることができるか—」と題して、ブース発表を行いました。ブース発表はポスター発表と一般口頭発表を合わせたような、90分の時間を使って、発表者と来聴者が自由にディスカッションできるような形式です。90分の使い方は、発表者によってさまざまなのでしょうが、私の場合は、2014年秋にスマホを使ったドイツ語教授法について話した時も今回も、半分くらいの時間を自分の報告、残りの時間を使ってディスカッションと情報交換という形にしました。

一年前にブログで下書きしていた

ドイツ文学について文学部ではない学部でどのように講義をすることができるか、そのさいに、語学教育のノウハウをどのように生かすことができるか、というのが今回の主題です。このテーマについては、すでに一年ちょっと前、去年の初夏にこのブログでも、数回に分けて書いていました。記事を書きながら、授業方法について整理することは私にとっては非常に有益だったし、ブログ記事を発表後にあらたな着想が得られたりすることもありました。

schlossbaerental.hatenablog.com

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今回の発表では、すでにブログに書いた内容に加え、16年前期・後期、17年前期と3学期間の授業で得られた手応えやその間に変更してきたこと、年度が変わって見えてきた課題なども付け加えて話しました。

土日と二日間の学会で、一番プログラムが混んでいる土曜日の午後という時間帯にもかかわらず、たくさんの人に聞きに来ていただけました。一時間半と持ち時間が長かったため、他の分科会の発表と行ったり来たりしながらも、ディスカッションには戻ってこられて、質問してくださった方や、他の発表には目もくれず私のブースにずっとついていてくださった方、予想もしない大入りで、大変感謝しております。

今回は、先週の発表の概要といただいたコメントから考えたことなどをまとめておきます。

 

1)独文学会における、文学講義の発表

日本独文学会でも、ときどき文学教育を題材とした研究発表をする方はいますが、私の知る限り数年に一回程度とごく稀です。しかし、多くのドイツ語教員にとって、語学教育だけでなく、教養科目としての文学や文化の講義も重要な仕事の一つです。周りの研究仲間に聞いても、みな講義の仕方については困っているという意見ばかり聞くのに、講義方法についての研究は多くないし、そもそも周りの人がどんな講義をしているのか意見を聞いたりする機会すらめったにありませんでした。

今回の私の発表が目的としていたのは、自分の授業実践を紹介するだけでなく、他の先生方からどんな工夫をしているか情報を得ることでした。懇親会でも情報交換はできますが、ブース発表という場があれば、私の方から提供した題材をもとに、懇親会より多くの先生がたから意見が得られるだろうと考えたのでした。

 

2)当日の発表内容

以下、当日使ったスライドで、発表内容を紹介します(一部省略したところもあります)。

 

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まずは、問題提起です。そのあと簡単な自己紹介として、専門分野や教歴を話しました。つぎに、2014年〜15年度に行なっていた講義内容です。

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この講義実践については、すでに昨年に近畿大学共通教育機構の紀要に概要をまとめて報告しています。

kindai.repo.nii.ac.jp

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2年間映画を使って授業をしましたが、一番の問題点は、教室のハード面の不備でした。2015年春学期は170名も受講者がいたため、定員200名程度の大教室を使いましたが、南側の窓にぼろぼろのブラインドがぶら下がっているだけで、あまり暗くならないため、もう映画はやめようと決意しました。

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映画を見せるということは、語学で言えば教科書を使って、授業で扱う材料を提供することと同じです。それならば、時代背景の解説と文学テクストのコピーを使っても、同じように授業ができるのではないかという発想から、文学を使う授業を始めました。

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授業の際気をつけたいのは、学生が漫然とこちらの説明を聞くだけになる時間をなるべく減らすということでした。これは普段の語学の授業でも気をつけていることですが、90分のうち、私が話す時間は30分から40分程度に留めるようにしていました。それ以外の時間はできるかぎり、学生が資料を読み、考え、書くための時間に充てました。

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毎回悩みのタネが配布資料でした。本からのコピーとなるため、どうしても枚数が多くなってしまいました。最大A3で四枚くらいでしたが、170名分を輪転機で用意するのに、毎週1時間以上かかりました。授業は月曜日だったので、人がいない金曜日の夜や土曜日に出勤して印刷作業をしました。(今思えば、早めに資料をつくって、学部の事務で印刷してもらえば良かったんですよね)

資料の枚数が増えると、学生が消化不良になるということはもちろん問題でした。しかし一番の問題は、私の研究室から経営学部の校舎までが、500mも離れていたため、当時は大量の資料と機材(iPadVGAケーブルなど)、そして答案用紙の回収箱(学科ごとに分けた二枚のトレイ)を持ち運ぶのが非常にたいへんということでした。

配布資料とともに、授業でつかったスライドもいちぶ紹介しました。各回ごとに、どのように問題をだし、次の回でどのようにフィードバックをしているかを説明しました。

サンプルとして取り上げたのは、第9回目のカフカを紹介した回です。

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『となり村』、『お父さんは心配なんだよ』と『変身』を読ませ、解答用紙に設問の答えと感想を書かせました。そして、次の回では、コメントの例を紹介します。

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どの回でも、学生たちのコメントはすばらしかったのですが、とりわけ面白い解答が多く出て来たのが、カフカの回でした。オドラデクのスケッチも面白かったです。

さて、実際の講義のスライドを紹介し、つぎに、どのようにこれまでの授業の問題点を改善できたか、3つのポイントに絞って説明しました。

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私語が多い、履修者が多すぎるという問題には、教室の機材とVGAケーブルで繋いでいるiPadを、自分のiPhoneをリモコンとして操作するという方法で、教室のどこにいてもスライド操作ができるようにしました。*1

こうすることで、教卓=話す人、椅子=聞いている学生たち、という位置関係によって規定された態度を変えてもらおうと試みました。

発表の際にも、この方法について説明しながら、じっさいに会場内を歩き回りながらスライドを動かしてみました。

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それから、授業内課題や中間レポートなどで、何を書いたらいいのか、指示を明確にするようにしました。漠然と感想を書かせると、どうしても学生たちは、「大人におもねるようなことを書けば正解だな」と判断して、自分たちが言いたいことが言えなくなってしまいます。文学の読解ですから、正解はありません。いかに自分の考えたことを筋道立てて書けるかが重要であると強調しました。

もちろん、あきらかに間違っている解答(殺されたはずの人物が生きてることになってる等の事実誤認や勘違い)には、「違う!」「もっとよく読むこと!」とコメントすることもありました。

 

発表ではさらに、私が授業で取り上げた作品について行ったアンケートと、学部指定の授業アンケートの結果を紹介しました。 

私の作ったアンケートでは、全14回で取り上げた作家と作品をならべ、以下の問いに、それぞれの回数(第2回目だったら、2と解答)を答えてもらいました。

1)最も面白かった回はどの回ですか?

2)最もつまらなかったのはどの回ですか?

3)もう一度読みたい作品はどれですか?

4)難しかった作品はどれですか?

アンケートの結果は、やはりわかりやすい、映画『コッホ先生と僕らの革命』がいちばん面白かったという反応でした。逆に、フロイトシュレーバー、ボルヒェルトなど、文章や表現が難しい作品は、つまらないという回答が多かったです。

問3では、カフカフロイトなどを選んだ学生も多くいました。問4 の質問は、問2と被ってしまうから無意味かなと思ったのですが、結果を見ると、難しいけど印象に残った作品と考えたのか、面白かった作品、もう一度読みたい作品とも重なる作家・作品に多く票が入っていました。

 

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私にとって興味深かったのは、学部のアンケートの結果でした。20項目程度のなかから、授業についての総合評価と理由を書いたコメントの部分だけを抜き出してまとめました。

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 学部事務がまとめてくれた結果から、いくつかのコメントを抜き出してまとめました。低い点をつけている学生も、べつに授業がつまらないし、真面目に勉強してなかったから低い点をつけているわけではなく、ちゃんと理解できなかった、授業内容を消化できなかったという点から低い点にしていることがわかります。取り上げるテクストの難易度をもう少し下げたり、あるいは説明や設問をわかりやすくする必要がありそうです。

最後に、全体のまとめです。

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 実践報告の発表なので、学問としての体裁はととのっていません(教授法のちがうクラスを比較してデータを取るなどのことはしませんでした)が、自分が実施している方法と、学生からの声を時間をかけて紹介したので、聞きに来てくださった方々には、ご理解いただけたと手応えを得ました。

 

3)今回の発表の工夫

2014年秋につづくブース発表でしたが、前回の発表からあまり時間がたっていないので、スライドや機材の使い方、時間の使い方等の要領がわかっており、準備もスムーズに進めることができました。

今回あらためて工夫したのは、まずスライドです。ブログやツイッターのアイコンにしている、ダディクールのイラストを入れました。あまり目立つところに入れない方法はないかと考えていると、Keynoteのテンプレート編集から、イラストやマークを入れる方法がわかったので、やってみることにしました。授業にはいつもKeynoteでスライドを作ります。そのさい、フォントは遠くからでも見えやすいように、太め大きめの文字(見出しはヒラギノ角ゴシック80ポイント、本文もヒラギノ角ゴ38ポイント)に直しています。今まで気づかなかったのですが、マスタースライドの編集で、いつも使う4種類くらいのパターンを全部修正しておくと、スライドを作ってる途中でも、ページ全体の仕様を変更することができるのでした。これは大きな発見でした。

このように、ダディクールとページ番号をそれぞれのページに入れました。

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地味に紛れ込ませるだけのつもりだった、ダディクールですが、せっかくいるのだからと、スライドを作る途中で、コメントを吹き出しに入れたりしました。

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また、配布資料については、ここまで紹介して来たスライドを、A4一枚に9ページに縮小し、さらに文字が小さめのページ(授業で扱った作品、参考文献表など)は、A4に2ページの大きさにしたものを合わせてA3で2枚にまとめました。

学会発表で、スライドをそのまま縮小した配布資料を配ることについては、賛否あると思います。今回は同じ時間に魅力的なプログラムが集中していたので、とにかく多くの人に資料だけでも持って帰ってもらおうと、見やすく、発表内容全体がわかる形の資料を作りました。

 

4)いただいたコメントなど

90分のうち、のこり40分ほどをディスカッションの時間に当て、多くの先生方から貴重なご意見をいただきました。思い出せるものを以下に挙げておきます。

  • 少人数クラスにもかかわらず、学生がひとりひとり作業しているだけ、というのはもったいないのではないか、学生同士に対話させるほうがいい。
  • テクストを読んでわからないことを、相互に質問し合うのが効果的だった。
  • 文章で書くことだけでなく、場面を想像して絵を描くという方法もある。
  • クラスの学生が知らない同士で、人間関係がないのであれば、むしろ授業を学生たちの集まる場所、学生自身にとっての居場所にしていく必要がある。
  • 学生に文章を書かせるのであれば、授業の中でどのように成長の跡が見られるか、確認したほうがいい。
  • 初年次教育分野におけるライティング教育から取り入れられるものもあるのではないか。

ほかにももっと多くのご発言をいただきましたが、なかでも私自身がこれから取り組んでいく必要がある課題となりそうなご意見は以上の通りです。

今回の発表は、また、これから講義科目を担当するよう若手の研究者の方にも参考にしてもらえればと思っていましたが、京大の後輩にも聞きに来てもらえました。彼らの今後の講義実践に役立てれば何よりです。

多くの人から、ご意見をいただけましたが、一番うれしかったのは、学部2年生のころにドイツ語を教えてくださった先生から、発表の後「いい先生になったね。本当に誇りに思います」と言っていただけたことでした。先生に習っていた頃は、もう20年前で、私はただのアホな小僧でしたが、なんとかそれなりの教員になることができました。

 

5)まとめ

スライドとともに、今回の発表をふりかえってきましたが、いつのまにかかなり長くなってしまいました。2016年から実施している、文学作品を読む講義ですが、まだまだ完成とは言えないでしょう。もっともっと改善しなければいけないことや、やってみたいこともあります。今回の発表で得られた意見から、さらに良い授業へと変えていければと思っています。

 

 

 

*1:メールやLINEの通知が学生たちに見られるのでは、というコメントがありましたが、この場合iPhoneへの通知は表示されません。また、iPadについては、あらゆるアプリの通知をOFFにしています。